総務相を更迭された鳩山邦夫氏は、“政界のサラブレッド”と呼ばれる一方で、タブーも恐れない発言を繰り返していた。ただ、脱線も多く、「放言大臣」「失言大臣」と批判されることもしばしばだった。
「友人の友人はアルカーイダ」。法相時代のこの発言は、国際社会でテロが問題化する中、厳しい批判を浴び、国会でも釈明に追われた。その一方で、歴代法相が発言を避けてきた死刑論議に踏み込んだ。判決が確定した死刑囚の執行をめぐっては、法務官僚が検討した上で、大臣が決定する現行制度を批判。死刑執行を「ベルトコンベヤー」にたとえ、「粛々と行われる方法はないか」と発言した。しかし、一部の法務官僚からは「死刑執行する人の苦しみに配慮してくれた発言」と評価する意見も出た。
実務では、「逃げることのできない責務」として、計13人の死刑執行を命令したうえ、史上初めて氏名公表も行った。朝日新聞から「死に神」と呼ばれ、怒りをあらわにしたことも。
このほか、田中角栄元首相秘書を務めた時代を振り返り、「毎月のように、ペンタゴン(米国防総省)がごちそうしてくれた」と利益供与を思わせる発言をしたり、鹿児島県議選で志布志町(現志布志市)の住民らが不正な取り調べを受けた志布志事件で「冤罪(えんざい)と呼ぶべきではない」とも。
総務相就任後は、「かんぽの宿」一括譲渡で日本郵政の西川善文社長と対立するようになり、東京中央郵便局の建て替え計画に「待った」をかけた。建物の一部を残すことで妥協したが、「トキを焼き鳥にし、剥製(はくせい)にして残す」などと発言。最近では、公然わいせつの現行犯で逮捕された人気アイドルグループ「SMAP」の草なぎ剛さんを「最低の人間」呼ばわりして、ファンらの反感を買った。
麻生太郎首相が、高級ホテルのバー通いを批判された際には「喫茶店に毛の生えた程度」と擁護したが、結局、その麻生首相に引導を渡される形になった。