2007→2010 上海マーケティングツアー 

【わかるかも中国人】(13)
夜遊びするなら「コスプレ」「ゴスロリ」
上海の若者が豹変する秘密のイベント

 インターネットや携帯を自在に使いこなし、アニメやマンガを愛好する上海の若者たち。前回紹介した「出戻り上海人」も、そうした一見先進国の若者と変わらない新世代に夢を託していた。

 中国の若者はたしかに大きく変わった。日本の若者もどこか変わってきているのだろう。でも、あちらの変わり方に比べたらとても比較にはならない。

これが「在上海越来越流行的COSPLAY(上海でますます流行のコスプレ)」というのだが… (c)頂層画廊

1980年頃の「夜遊び」と言えば…

 たとえば、改革開放初期の1980年代。筆者が大学生だったころの中国での体験を思い出す。地元大学生と知り合いになり、ダンスパーティに誘われた。連れて行かれた先は、映画「ラストエンペラー』の時代にタイムスリップしたような古い洋館。広いダンスフロアで楽団が生演奏、若者たちが社交ダンスに興じていた。正直、ずっこけた。これが彼らの遊びのセンスなのか。なんて旧式な、なんて共産党・中国どっぷりの…。日本の学生生活とのあまりの落差に呆然としたものだ。

 20年前の改革開放世代にとって、それが精一杯気張った夜遊びだったのだろう。いまでは筆者もそう冷静に思い返すことができる。しかし、最近の上海に行くと、ここまで変わったのかと、20年後の新世代の素顔に驚かされるのとともに、親しみを感じることもある。少なくとも、昔に比べればずいぶん距離が縮まったのではないかと。

 新世代の中国人のセンスとは、具体的にどんなものか。中国で先端を走るという上海の若者たちは、どんな連中なのか。

 それを探るのに格好のスポットがあると聞いた。地元マスコミから「パーティの女王」と呼ばれる上海人・趙丹虹さんの運営する「頂層画廊」だ。2000年4月のオープン以来、国内外のアーチストの企画展をはじめ、さまざまなパフォーマンス、ライブ活動を展開。のみならず、コスプレパーティなども夜な夜な繰り広げられているという。

店内のいたるところにアート作品が展示される「頂層画廊」のカフェ

 さっそく訪ねることにした。「頂層画廊」の在り処は、租界時代の目抜き通り、南京東路裏手の雑居ビル。12階までエレベーターで上がった。そこにはアジアの都市でよく見かける、いかにも外国人好みのカフェがあった。気どりのない、でも懸命にアート仕立てにしている手作り風が好感触、とでもガイドブックに書かれそうな空間。奥のほうに作品の展示スペースがある。

 そこが、夜になるとバーに早変わり。ライブやパーティが頻繁に行われる。なかでも話題を集めたのは、2003年頃から始まった「上海派対(上海パーティ)」と銘打つイベントだ。アパレルで働く女の子たちによるゴシック・ロリータ(ゴスロリ)風ファッションや、顔中にペイントした200名もの若い男女による下着パーティなど、毎回テーマが変わる。その夜ばかりは、派手なメイクと衣装に身を包んだ若者がどっと集結する。

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このコラムについて

生産拠点から巨大市場として注目されてきた中国。そこで何が、どうして、支持され、売れていくのか。2010年の中国市場を先読みするための、最先端市場現地レポート。

筆者プロフィール

中村 正人(なかむら・まさと)

編集者。1963年生まれ。立教大学社会学部卒。出版社勤務などを経て2004年からフリーに。専門は観光関連業界のビジネス動向、最近は訪日中国人旅行市場に関心を持つ。また東京池袋界隈の在日中国人事情にも詳しい。主な著書に、『最新データで読む産業と会社研究シリーズ トラベル・航空』『ホテル』『図解 中国の地域性がわかる本』(産学社)『行きたい街を歩く 上海・蘇州・杭州』(西東社)など

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