痴漢えん罪で逮捕されたら
2009年04月20日月曜日PM | コメント(2) | トラックバック(0)
去る14日、痴漢裁判において、最高裁が地裁、高裁の有罪判決を初めて覆しての無罪判決を出しました。専門家の解説は我らが落合先生のブログ（3つ目の記事）を見て頂くとして、もちろん私は全面的に支持します。疑わしきは被告人の利益に、推定無罪という大原則。
痴漢えん罪は、電車に乗るビジネスマンにはいつ降り掛かるともわからない問題です。
わりと最近、電車で酔っぱらいの女性が横にいて、ちょっとコズいたんですね。寄っかかってくんなや、と。酔っぱらいですから、コズかれても、酔っているわけなんですが、ふと脳裏をよぎったのは、こやつが「痴漢です！」って騒ぎ出したらどうしよう、ということ。んなわけで、コズいたんじゃなく、たまたま当たっちゃったかのように、とても品行方正な振る舞いを残りの時間演じることになりました。
だって、やつの、「痴漢です！」の一言で、ただちに対等なゲームではなくなってしまうわけです。私が「いやいや、さっき寄りかかってきたから、ちょっとはねのけたけど、その腹いせでこいつはさ...」って言っても、「はいはい、あとでゆっくり聞くから駅長室きてね」ということになって、これは怖いですよ。
さて、よく整理しないといけないのですが、まず、私の意思に反して駅長室に連れて行かれたり、自由な行動を妨げられたりするのは、「逮捕」という行為です。逮捕は、原則的には警察官や検察官が請求し裁判所が逮捕状（令状）を発布しなければできません。しかしこれには例外があって、「現行犯」の場合は誰でも犯人を逮捕できます（刑事訴訟法第213条）。駅員や通行人に腕を掴まれたりすることは、現行犯逮捕である前提で有効なわけです。
ところで、女性が、「この人、痴漢です！」と騒いだという事態は、現行犯に値するのでしょうか。「言っただけ」でしょう。
ちなみに、そこは置いておくにしても、刑事訴訟法217条はこういう条文です。
刑事訴訟法 第217条
30万円（刑法、暴力行為等処罰に関する法律及び経済関係罰則の整備に関する法律の罪以外の罪については、当分の間、２万円）以下の罰金、拘留又は科料に当たる罪の現行犯については、犯人の住居若しくは氏名が明らかでない場合又は犯人が逃亡するおそれがある場合に限り、第213条から前条までの規定を適用する。
「犯人の住居若しくは氏名が明らかでない場合又は犯人が逃亡するおそれがある場合に限り」、現行犯逮捕ができる、つまりは、軽微な犯罪の場合で、犯人が住所や氏名を明かしており、逃亡の恐れが無い場合は、現行犯逮捕をすることができない、ということです。
ですので痴漢えん罪で拘束されそうになったら、
「私はやっていない。それから、私は●●に住んでいる●●だ。今後、起訴され、裁判で争うのは結構だが、身分を明かしたので、刑訴217条の要件を満たしておらず、あなたがたは私を現行犯逮捕はできない。不当に私の身体を拘束すれば、追って逮捕監禁罪で被害届を出し、及び民事で損害賠償請求を起こす。」
と言いましょう。
これ、争うパターンとして、よく覚えておいた方がいいでしょうね。交通違反などで、「俺はやってない。だから名を名乗る必要も無い」と言って争う人がいますが、その場合は現行犯逮捕されてしまいます。そうではなくて、身分を明かした上で、俺はしていないとした方が、逮捕もされないことになります。
さて今回の件は、防衛医大の教授だから、3年もかけて最高裁まで争えたのでしょう。並のサラリーマンは、常識的には、40キロ道路を70キロで走ってたらネズミ獲りにあったとでも思って、とっとと罰金を払った方がましでしょう（初犯なら5万円程度だったかと）。
けれど、一部始終を記憶しておいて、駅員や鉄道会社を刑事告訴及び民事で損害賠償を提訴しましょう。やってきた警察官が適切な取り調べをしなければ（黙秘権等、被疑者の権利の説明をしない・認めない）、名前を覚えておいて、これも訴えましょう。
どうせ相手は認めずに適切に行ったというのだろうけど、そんなこと関係ない。どこまでも引かずに闘えばいいのです。
転んでもタダで起き上がってはいけません。しっかり回収しましょう。
追伸 上記はえん罪の話です。言うまでもなく、痴漢はしちゃいけません。
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タグ
法律
trashbox | 2009年4月23日 13:30
こんにちは。
この記事にある痴漢冤罪への対処法は、神田忠如さんが考えられた方法ですか？
お答え頂けると幸いです。
神田忠如 | 2009年4月24日 14:16
誰かが考えたものではなく、法律にそう書いてある、ものです。お答えになっていますでしょうか。
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