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【放送芸能】

手書き風字幕なくなる!? 洋画 なじみ感、柔らかさ魅力だが…

2009年6月12日 朝刊

 かつて「書き屋」「タイトルライター」と呼ばれる職人が一文字一文字を筆で書いていた洋画の字幕。その名残で、パソコンの機械的な文字がはんらんする現代でも「手書き風フォント」が使われ続けてきたが、近年、ゴシック文字の字幕が増えているという。味わいのある“手書き”の文字は、スクリーンから消えてしまうのか−。 (石原真樹)

 洋画の輸入が始まったのは一九三〇年代で、当時の字幕は「パチウチ方式」。カードに筆で字を書いた「タイトルカード」を基に凸版を作り、フィルムに直接、傷をつける、やや原始的な方法だ。

 その後、手書きのタイトルカードを撮影して字幕だけのネガを作り、映像ネガと重ねてプリントする「撮影/焼き込み方式」が主流になった。

 手書き字幕が消えていき、活字で字幕ネガが作られるようになったのは八〇年代から。パソコンが出回り始めた時期と重なる。二〇〇〇年ごろには、文字をフィルムにレーザーで焼き込む「レーザー方式」が登場し、現在に至った。

 お金も時間もかかる手書き字幕がなくなる一方で、手書き文字はスキャナーで取り込んでデータ化され「手書き風フォント」として残った。「佐藤フォント」「橘フォント」など“生みの親”の名前がつけられ、映画風に演出されたCMなどでも活躍している。

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 手書き風フォントは使用料が必要だが、高額ではない。現在、字幕を手書き風にするか、一般的な活字であるゴシックを使うかは、配給会社の好みによるという。

 ゴシック派は二十世紀フォックス、パラマウント、角川映画など。理由は「DVDでの映画鑑賞の普及」だ。

 劇場では手書き風を使った作品も、DVD版では基本的にゴシック。映画館の年間入場者数一億六千万人に対し、DVD鑑賞人口は六億九千七百万人(08年)という現状で、「DVDやテレビ番組でゴシック文字を見慣れている人が多い」(角川)、「若者は文字へのこだわりがなく、(手書き風は)逆に見にくいらしい」(パラマウント)というのだ。

 一方の手書き風フォント派は、映画らしさへのこだわりを見せる。90%以上で手書き風を使うワーナーは「昔からの映画人は手書きになじみがある」、ディズニーも「手書きの柔らかさは映画らしい。われわれは映画を手掛けているんだ、というプライド」とする。

 アスミックエースなど、作品によって両方を使い分ける中立派もある。

 ただ、共通認識は「世の流れはゴシック」だ。手書き派のワーナーも「結局は客商売なので、どうなるかはわからない」と本音を漏らす。配給会社の字幕担当者の世代交代が進むこともあり、「いずれ手書き風はなくなる」とのため息も聞こえる。

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 ところで、フィルムを使わない映画のデジタル化は、字幕に影響するのか。デジタル字幕ではDVD同様、文字の縁取りや陰影をつけることが可能で、白い背景で文字を浮き立たせられる利点もある。

 ずっと手書き風を使ってきた東宝東和は、三国志が題材の「レッドクリフ」で、共同配給したエイベックスの意向を受けゴシックを採用した。「デジタルの画面に、果たして手書き風文字がなじむのかわからない」といい、「レッド〜」のヒットを機にゴシックへの変更を検討中だ。

 逆に「デジタル時代こそ手書き」を強調するディズニーは「『劇場でDVDを流してるだけ』と思われるのは嫌。手書き文字は、DVDと劇場版を差別化する手段になる」。ワーナーは「デジタルスクリーンも従来のフィルム風の画質を追求するはず」と、デジタル化と字幕はあまり関係ないとの姿勢だ。

 

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