戦後に咲いた徒花? 電子音楽が結んだ大きな“実”
「日本の電子音楽・増補改訂版」著者に聞く
YMOの再結成、テクノポップアイドルPerfumeの隆盛、草月ホールでの「日本の電子音楽」コンサート、サマーソニック2009にエイフェックスツインが電撃参戦と、今年は「電子音楽」が盛り上がっている。そこに何の前触れもなく、とんでもないボリュームで登場した「日本の電子音楽・増補改訂版」。なぜ、今、電子音楽なのか、編・著者の川崎弘二さんに話を聞いた。
−−それにしてもデータが膨大かつ詳細
「小さい頃から、ディスコグラフィを作るのが趣味だったんです。坂本龍一やゴダイゴのレコードのリストを延々と書き連ねて、悦に入ったりして。変な子供でしたね(笑)」
−−なぜ今、電子音楽?
「いま、東京都現代美術館で池田亮司さんの個展が開催されていて、『日本の電子音楽分野の第一人者』と喧伝されていますが、こうした現在系の世代と、50年代にたとえば武満徹のような作曲家たちが手掛けていた広義の電子音楽とのあいだには断絶があるんじゃないかと思うんですね。証言を確認する機会も失われ、資料も散逸しつつある現在、まずはデータを収集・整理してみたい、というか、電子音楽を含む戦後芸術の軌跡を詳細に知りたいという欲求がまずはあったんじゃないかと思います」
−−元々分厚い本だったが、今回は1100ページを越えた
「ここまでたどり着けたのは、論文を寄稿して下さった方々、そしてインタビューをお引き受けいただいた作曲家の皆さんのおかげだと思っています。ただ、知り合いからは、嫌がらせに近いとお叱りを受けています。次の改訂版は立方体になるんじゃないかとか(笑)。ただ、僕としてはまだまだ調べ足りない感じもあります。日本の電子音楽はこんなもんじゃないという思いが強いんです」
【テクノロジーの進歩の影で】
−−扱いづらい機材と格闘していた往時と比べて、現在は格段の進歩
「本当に、手探りだったと思います。非常に高価で、一部の人しかアクセスできなかったしね。ただ、安易にテクノロジーの進歩を批判したくはないんです。ラップトップの前に座って、マウスをいじって、それの何がライブか、なんて、そのまんま、当時の電子音楽に携わる人たちが言われてきた事と同じじゃないかって」
−−テクノロジーは進歩したが、電子音楽は衰退した
「たしかに、狭義における『電子音楽』は、1970年の大阪万博辺りを境に衰退していきました。ただ、電子音そのものは、テクノロジーの普及とともに、僕たちの生活を覆い尽くしている。職業柄、若い学生と接する事が多いのですが、そこで感じるのは、彼らにとっては、アコースティックな音の方が特別で、電子音こそが日常であるという事。ゲーム然り、携帯然り。しかも、無機的なものと考えられがちな電子音が、例えば、メールの着信音なんかが、異性との交遊といったような甘酸っぱい思い出と結びつく。そういう中で育っていった彼らが、新しい『電子音楽』を奏ではじめた時、この本がどう読まれるのか、非常に興味がありますね」
−−本当に?
「すいません、あまりそういう興味はありません。ちょっとインタビューっぽい事言っとこうか的なあれでした(笑)」
−−自宅でも電子音楽を聴く
「実はほとんど聴きません(笑)。ある媒体に記録された音、音楽というものは何なのかということが気になって、レコードやCDすらまったく聴けなくなったこともあった。だから、家ではもっぱら、窓の外から聴こえてくる音、そういったものを聴いてますね。そういうのを聴きながら、山口瞳かなんか読んでね。そんな時が一番、落ち着きます」
−−紙という媒体に記録された言葉、文学というものについてはあまり気にならない
「そう言われればそうですね。不思議なもんですね。だけど、それも気にするようになって、レコードも聴けない、本も読めないっていうのは、ちょっとね(笑)。そもそも、自分でこんな分厚い本を出しておいて、本が読めないっていうのは、まずいよ(笑)」
■かわさき・こうじ
1970年大阪府生まれ。1994年大阪歯科大学大学院修了。博士(歯学)。2006年「日本の電子音楽」を大谷能生との共著で出版。2009年3月「日本の電子音楽・増補改訂版」出版。
■「日本の電子音楽増補改訂版」(愛育社・4300円)
「電子音楽」の軌跡を厖大な資料と関係者へのインタビューによって再現。気鋭の論客5名による論文、24名に及ぶ作曲家へのインタビュー(総計41名)を追加し、全面的な改稿、新発見のデータを加えて約500頁を増補。
ZAKZAK 2009/06/12
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