金正雲の写真（東亜日報電子版より、クリックで拡大）

　テレビ朝日が１０日に「独占入手した」と報道した北朝鮮の金正日総書記（６７）の三男、正雲氏（２６）の写真について、同局は１１日、「別人の可能性が極めて高い」として訂正、謝罪した。昼と夕方のニュース、午後のワイドショーでも、おわびの放送を行った。写真については、放送直後から韓国紙や韓国情報当局筋が「あれは韓国人だ」と指摘。どうやら金総書記の「ソックリさん」を息子だと思いこんでしまったようだ。

　テレ朝は１０日午前のニュースで「最近、外国で撮影された」という正雲氏の写真を放送。同日夕方の「スーパーＪチャンネル」では約３０分間にわたり、複数の専門家のコメント付きで詳細に写真を紹介した。だが、同番組の後半では「複数の韓国メディアが別人ではないかと指摘し、現在確認中です」とアナウンスし、早くも雲行きが怪しくなった。

　夕刊テレビ欄で「北朝鮮後継の金正雲氏　最新写真を世界初入手」と予告した同日夜の報道ステーションでは、キャスターの古舘伊知郎氏が「疑いが出ている以上、ニュースでは伝えられない」と弁明。１１日になって、正式に「別人」と認めた。

　同局によると、写真は「韓国当局の関係者から入手し、北朝鮮指導部に近い関係者らへの確認作業を行ったうえで放送した」という。だが、韓国政府情報筋は放送直後から「金正雲なんてあり得ない。あれは韓国人のおやじ。長男、金正男の単独インタビューを成功させたほどの日本のテレビ局が、なぜ詐欺師にだまされたのか」と一笑に付していた。

　韓国紙・東亜日報（電子版）も放送直後に「日本のテレビが誤報騒動」と報道。写真の主は「韓国在住で建設業のぺ・某さん（４０）」と断定し、ぺさんがブログにアップした写真を誰かが「金総書記の後継者写真」としてネット掲示板に貼り付けたものだと断じた。韓国の聯合ニュースはぺさんを直撃。「２月にサイトに掲載した自分の写真だ」との証言を得た。

　「金総書記に似た人は北の国内にゴマンといる」と語るのは訪朝経験豊富な貿易関係者。「茶色の人民服は多くの人が愛用している。カネのかかるパーマや怪しげなサングラスは党の幹部が好む。将軍様ルックは男のステータスなのかも」。ソックリさんは大勢いるようなので、油断は禁物だ。