WHO「フェーズ6」宣言、症状は「中等度」
世界保健機関(WHO)のマーガレット・チャン事務局長は6月11日、記者会見を開き、新型インフルエンザの警戒レベルを世界的な流行を意味するフェーズ6に引き上げることを宣言した。症状の深刻度については「中等度」とした。一方、日本政府は12日、引き続き現在の基本的対処方針などに基づき、感染拡大の防止や適切な医療の提供に努めるとの官房長官談話を発表した。
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チャン事務局長は、新型インフルエンザのヒト―ヒト感染が、複数の国で疫学的リンクが追えないレベルで起こっており、「感染の拡大は避けられないと考えられる」と指摘。警戒レベルを引き上げる「科学的基準が満たされた」とした。
新型インフルエンザに伴う症状については、患者の大多数は症状が緩やかで、回復も早いと指摘。医療的なケアをしなくても回復するケースが多く、死に至るケースも少ないとした。その上で、状況を注視する必要はあるが、重症例や死亡例が急激に増えることはないとの見通しを示した。なおWHOは11日、「中等度」との評価が意味することとして、感染者のほとんどが、入院したり医療的なケアを受けたりしなくても回復することなどを挙げている。
またチャン事務局長は、感染者の年齢的な特徴について、若年層で感染が広がる傾向があり、感染者の集団発生は25歳以下で起こるケースが多いとした。
また通常の季節性インフルエンザでは、死亡例のほとんどが虚弱な高齢者の間で見られるが、今回の新型インフルエンザでは、重症例や死亡例のほとんどが、30−50歳で見られるとし、「(季節性インフルエンザとは)大きく異なる傾向」と指摘。また、慢性疾患を抱えた人の間で重症例が多いと述べた。さらに「特に注意すべき点」として、重症例や死亡例の3分の1から2分の1が、健康な若年層や中年層で起こっていることを挙げた。
またチャン事務局長は、これまでに探知されている事例の大多数が、「比較的豊かな」国のものであり、医療資源などの問題を抱える途上国などで今後、ウイルスがどのような動きを見せるか「分からない」とし、注意を促した。既に流行している国では、第2波への備えが必要だと強調。また、感染が広範に広がっている国では、患者の検査や調査に力を入れても、すぐに能力が限界になるとの見方を示し、患者の適切な管理に注力すべきとした。
ワクチンについては、「季節性インフルエンザワクチンの生産は間もなく完了し、今後数か月の間に、(新型インフルエンザの)ワクチンを可能な限り多く生産できるよう、すべての生産能力を振り向けられるようになるだろう」との見通しを示した。また、「WHOは渡航制限や国境封鎖を勧めない」と強調した。
一方、日本政府は12日、フェーズ6への引き上げを受けて、河村建夫官房長官の談話を発表。この中で、「わが国では、新たな感染者の発生が比較的少なく、感染がまだ一部地域に限定されている状況」との認識を示し、「世界規模で感染が拡大している状況を踏まえつつも、引き続き、現在の基本的対処方針などに基づき弾力的な対策を講じ、感染拡大防止、適切な医療の提供、医療体制の充実強化などに努めていく」とした。
更新:2009/06/12 13:53 キャリアブレイン
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