ここから本文エリア

現在位置:asahi.comマイタウン石川> 記事

この人に聞く

正しい時計の使い方とは

2009年06月11日

写真

 ◎ペットのように可愛がって◎

 日本中から時計修理の依頼が寄せられる時計屋が白山市にある。「イソザキ時計宝石店」。店主の磯崎輝男さんはマイスター公認高級時計師(CMW)の資格を持ち、ロレックスやオメガなど修理した高級時計は6千本を超える。6月10日は時の記念日。磯崎さんに正しい時計の使い方や修理について聞いた。

 ――CMWとは

 アメリカ発祥の、時計職人最高峰の技術試験です。5日間にわたる筆記と実技試験に合格した者に与えられます。これまでの合格者は国内で約800人ですが、高齢化が進み、現在は数十人程度ではないでしょうか。

 ――具体的な仕事内容は

 壊れた時計を分解修理し、洗浄・組み立て・注油をし、正確に動くよう調整する仕事です。対象は機械時計や高級クオーツ時計。時計の心臓に当たるテンプの心棒「天真」や、ゼンマイを巻く時や針を合わせたりする時に重要な「巻真(まきしん)」などといった部品は自分で作ることもあります。

 時計は思い入れが強い品です。親御さんの形見とか大切な人からのプレゼントとか。動かなくなった形見の時計が修理を終えて時を刻むようになり、「親が生き返ったよう」と仏前に供えるお客様もいます。

 ――インターネットの情報発信も取り組み、メールマガジン購読者も多いとか

 かつて宝石の販売が主だったのですが、バブル景気がはじけてからは妻の助言で時計修理に力を入れました。9年ほど前、テレビで万年筆の修理をネットを通じて受け付けている店の情報を知ったのがネット発信のきっかけです。主に長男と長女がネット発信を手がけ、私も「時計の小話」のタイトルで時計にまつわるコラムを担当しています。

 ――ネットでの情報発信で心がけていることは

 機械時計は安いものではありません。より賢い買い物をしてもらえればいい。

 誤った使い方をしている人も多い。例えばロレックスの時計をつけてサウナに入る人がいる。防水機能があっても高温ではパッキングや潤滑油が変質します。時計をしてゴルフをする人もいる。先端が0・07ミリ以下と髪の毛の先ほどしかない部品もあり、衝撃を受けると折れてしまうかも知れない。激しい運動をする時は時計をはずす、安価な時計をするなど配慮が必要です。

 ――近年、携帯電話の時計機能で時間を知る若者がみられますが

 それでも、ビジネスマンの間では機械時計を買う人がかなりいます。ビジネスでのステータスとしてみられているということでしょうか。

 ――改めて、機械時計の良さとは

 正確さではクオーツ時計に譲るものの、寿命が長い。良いものは50〜70年持ちます。手巻き時計はねじを巻くなど手がかかりますが、ペットを可愛がるように愛着がわきます。

 私は、時計は人間が作った機械の中で最高のものだと思っているんです。人間は限られた寿命しか生きられない。その限られた時間を刻むのが時計です。時計を大切にすることは時間を大切にすること。時間を大切に、人生を大切にしてほしいですね。

(角谷陽子)

    −*−*−*−*−*−

 【いそざき・てるお】

 1947年、滋賀県長浜市生まれ。父の時計店を継ぎ、大津・大阪のCMW時計師に通いながら修理技術を学ぶ。71年に高級時計師の資格取得。80年、イソザキ時計宝石店を開業。9年前からインターネット発信を始め、メールマガジンの読者は4千人を数える。

PR情報
朝日新聞購読のご案内

ここから広告です

広告終わり

マイタウン地域情報

ここから広告です

広告終わり