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オフタイム:感情で人を裁くな /福島

 先月、被害者参加制度の県内初適用となった裁判を取材した。交通死亡事故の裁判で、法廷で被告に対し直接意見を述べた遺族は、判決後「正直、気持ちは晴れない」と肩を落とした。

 事故は昨年7月、矢吹町の町道交差点で、当時19歳だった女性が注意義務を怠り、自身の乗用車をタクシー運転手の男性(当時65歳)の乗用車に衝突させ、男性が死亡した。

 遺族は意見陳述で、事故後被告が積極的な謝罪をしてこなかったことを指摘、「事故そのものと、その後の被告人の対応で精神的ダメージを受けた」と語った。

 ふくしま被害者支援センターの男性相談員は「参加することに意義がある」という。確かに、被害者が裁判で被告へ意見を述べることで遺族が精神的な負担を負うこともあるだろうが、意見を言えず一生傷を背負っていくのもまた、苦だ。この制度は必要なものだと言える。

 ただ、気になることもある。今後、裁判員裁判が実施され、遺族が自らの意見を裁判員の前で述べることになる。審理では参考意見程度の位置づけだが、法的知識のない一般の市民が参加する制度では、被害者感情を冷静に判断できなくなるのではないか。少なくとも、今回の裁判を傍聴して私自身も、被害者への同情を隠し切れなかった。

 問題は、裁判員が事実認定をないがしろにし感情論で判断してしまうことだ。裁判員には、感情論から一線を引いた冷静な判断を求めたい。【神保圭作】

毎日新聞 2009年6月12日 地方版

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