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親の甘茶が毒になる

2009年6月12日0時4分

 GMが破綻(はたん)した。80年代の日米通商摩擦時代、トヨタ経営陣に一日も早い米国進出を進言したことがあるが、まさに今昔の感だ。

 GMは実質的な国有化で再建を図るが、この過程で極論すれば「銀行はつぶさないが企業は破綻もやむをえない」というオバマ政権の姿勢が浮き彫りになった。

 オバマ政権は、ブッシュ政権下で成立した金融安定化法を継続強化し、銀行の不良債権買い取り、不良資産の政府保証、不良資産切り離しなど政府が税金でリスクを肩代わりし、メガバンク、大手保険業の破綻回避をはかった。また、大手銀行19行に資本水準が適切でない場合は条件付きで資本を注入するという「ストレステスト」(特別検査)をかけ、10行に対し資本増強を要求したが、これでシティグループやバンク・オブ・アメリカの国有化懸念が消え、金融不安は小康状態を得たといわれている。

 一方、GM、クライスラーなど瀬戸際の企業には、再建策の提出期限を切って、不可能なら破綻と、待ったなしの対応で迫った。

 金融界、産業界いずれも公的資金投入による救済策で差別はないように思える。しかし、対応の温度差を考えると、強欲な一部金融界の不始末を税金で尻ぬぐいするだけで済まして、甘やかすことはモラルハザード(倫理観の欠如)を温存し「親の甘茶が毒になる」で、さらなるシステム悪を醸成するだけだ、という批判もうなずける。

 GM破綻は工場の閉鎖、ディーラーの削減、下請け企業約1万社の打撃など、連鎖リスクも世界的に広がる。とはいえ、銀行倒産、取り付け騒ぎで預金者が窓口に殺到する場景の方が、政治家にとっては悪夢だということだろう。(昴)

    ◇

 「経済気象台」は、第一線で活躍している経済人、学者など社外筆者の執筆によるものです。

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