国連安全保障理事会の常任理事国5カ国と日本、韓国が2回目の核実験を行った北朝鮮に対する新たな制裁決議案で最終合意した。北朝鮮を出入りする貨物の検査強化や金融制裁、武器禁輸の拡大などを盛り込んでおり、週内にも安保理で採択される見通しという。
焦点になっていた貨物検査は各国への義務付けを見送り、「要請する」との表現に落ち着いた。強い措置を求めた日米と制裁強化に慎重な中国との妥協の結果である。政府・与党内には実効性を懸念する声も出ているが、ともかく中国を巻き込んで追加制裁措置をまとめた安保理の努力は前向きに評価したい。
決議案は06年10月の北朝鮮による最初の核実験を受けて全会一致で採択した決議1718を強化する内容だ。北朝鮮を強く非難し、さらなる核実験や弾道ミサイル発射を行わないよう求めている。
具体的措置として、北朝鮮からのすべての武器輸出禁止、北朝鮮による小型武器以外の武器輸入の全面禁止、人道・非核化目的以外の北朝鮮への新規融資や金融支援の中止などを要請している。これらの措置は国連憲章7章41条(経済制裁)に基づくとし、軍事的措置は排除している。緊張を高めるとして反対論を唱えた中国への配慮からだ。
貨物検査や経済分野の規制は決議1718にも盛り込まれていたが効果が薄く、その後も北朝鮮の無謀な行為を許した。特に貨物検査については「協調行動の要請」にとどめたため事実上野放し状態だった。
こうしたことの反省から、今回は禁輸物資を積んでいるという合理的な理由がある場合は国連加盟国に自国領内での検査を要請することになった。公海上の船舶検査で船の所属国の同意を得られなかった場合は、適当な港に寄港させることを可能とする措置も盛り込んだ。
問題はこうした追加制裁にいかに実効性をもたせるかである。制裁の履行状況を監視するための専門家委員会の新設はそのためのひとつの方策だが、強制措置をとれない以上、実効を上げるには結局は国際社会が結束して取り組むしかない。特に、強い決議に一貫して慎重姿勢をとっている中国には北朝鮮説得に全力であたってほしい。
日本の対応も問われる。河村建夫官房長官は貨物検査を可能とするための国内法整備を検討する考えを表明した。公海上での自衛隊による船舶検査を可能とするには船舶検査活動法改正か新法が必要になるが、平時の検査での不測の事態を懸念する声もある。この問題で前面に出ることが適当なのかどうかを含め日本の役割を冷静に検討したい。
毎日新聞 2009年6月12日 東京朝刊