現在位置:
  1. asahi.com
  2. 社説

社説

アサヒ・コム プレミアムなら過去の朝日新聞社説が最大3か月分ご覧になれます。(詳しくはこちら)

対北制裁決議―危機への結束を崩すな

 2度目の核実験を行った北朝鮮に対して、国連安全保障理事会の常任理事国に日韓を加えた7カ国が、新たな制裁決議案をまとめた。

 核実験から2週間あまり。これ以上の暴走を許さないという決意を、国際社会が結束した行動で示さなくてはならない。全会一致での採択を望む。

 北朝鮮による最初の核実験をうけて、安保理は06年に初の対北制裁決議を採択した。新たな決議案はその制裁を強化しており、北朝鮮への圧力は一段と高まることになる。

 核・ミサイルにからむモノとカネの流れを抑えるための貨物検査の強化や金融制裁の追加、武器禁輸の拡大などが盛り込まれた。

 日米両国は貨物検査の義務化を求めたが、実力行使を懸念する中国の抵抗で見送られた。それでも関係各国の領域内や公海での貨物検査の実施措置は強化され、休眠状態だった制裁委員会が履行を監視する仕組みも整えた。

 金融制裁では、核・ミサイルに関する資金・資産の移転の阻止などがうたわれた。マカオの銀行口座の凍結に北朝鮮が強く反発した時のように、締め付けの効果が期待できそうだ。

 前回は、制裁決議が採択された後、米朝協議が進んで6者協議が再開されるという展開をたどったが、今回は様相が異なる。

 北朝鮮は安保理の制裁論議に「さらなる自衛措置が不可避になる」と反発しており、新たな挑発行動を起こすことが懸念されている。

 北朝鮮が今後も弾道ミサイル発射や核実験を続けるならば、安保理は追加制裁に踏み切る必要があるだろう。今回の協議で対北政策をめぐる関係国の共通理解は深まった。6者協議が停止した中、この結束をしっかり維持して、今後の対応も緊密に協議していかなければならない。

 中国は自国の主張を決議案に反映させた以上、先頭に立って実行しなければならない。北朝鮮にとって最大の貿易相手国である中国が真剣に対応しなければ、どんな制裁決議も絵に描いたモチになる。

 米国も、北朝鮮政策を対話路線から圧力重視へ転換している。対話を呼びかけているボズワース北朝鮮政策特別代表も「強制的な措置や抑止手段の拡大を含む新たな対応の検討が必要だ」と述べている。日本や韓国と協調して、独自の金融制裁や核などの拡散防止活動の強化も検討しているようだ。

 決議の狙いは、あくまで北朝鮮の核・ミサイルの開発を阻止し、緊張と危機への歩みを止めることだ。この決議はひとつの起点にすぎない。

 北朝鮮の脅威に直接さらされる日本も、現実的で効果のある制裁網に参加しつつ、事態の悪化を避けるための外交を忘れてはならない。

民主党―自浄力が問われ続ける

 民主党が、西松建設による違法献金事件の検証を外部の識者に委ねた「第三者委員会」が報告書をまとめた。

 小沢前代表の公設秘書が起訴された事件をめぐる党や小沢氏らの対応を検証し、今後の党運営にその教訓をどう生かすべきなのか。客観的で公正な見解を示してもらう狙いだったという。

 そう思って50ページに及ぶ報告書を読むと、違和感を抱かざるを得ない。その大半が、検察の捜査や報道のあり方に対する批判で占められているからだ。小沢氏の、あるいは民主党の事件への対応ぶりを検討した部分は後半のわずか14ページにすぎない。

 第三者による検証に意味があるのは、何より当事者自身の責任や過誤について、当事者にはしにくい公正な評価ができるからだろう。

 報告書は確かに「小沢氏はもっと積極的にマスコミに訴える姿勢があってもよかった」などと指摘はしている。では、小沢氏は具体的に何を説明すべきだったのか。民主党はどんな説明を求めるべきだったのだろうか。

 小沢氏や党の執行部に最も欠けているのは、なぜ特定のゼネコンから巨額のカネをもらい続けたのか、仮に違法でないとしても民主党代表にふさわしいことだったのかという疑問への素直な答えである。

 長い自民党支配の下で、土建業界の談合体質と政治家とのかかわりをめぐっては、多くの腐敗事件が摘発されてきた。その業界からの献金なのだから、合法性はむろんのこと、その政治的な妥当性について小沢氏は語らねばならない。

 党のトップに対して、内部からは指摘しにくいことだろう。そこに切り込んでこその第三者委ではなかったか。

 検察批判に関して、なるほどと思う点はある。

 たとえば、同様に西松のカネをもらっていた自民党議員たちがなぜ立件されないのか。検察の権限が乱用されたとしても、誰のチェックも受けない、今の仕組みのままでいいのか……。検察や法務省の説明を聞きたい国民は多いのではないか。

 報道批判についても、耳を傾けるべき指摘がないわけではない。

 報告書は、あくまで党の外の識者たちの意見にとどまる。問題は、民主党自身がこの西松問題をどう克服していくかだ。

 民主党は鳩山新代表の体制になった。この報告書を機に事件には区切りをつけ、これからは総選挙に全力投球したいというのが、大方の思いだろう。だが、これで幕というのでは、有権者の多くは納得できまい。

 小沢氏が代表代行として選挙を仕切る以上、説明責任から逃れることは難しい。民主党自身の自浄能力も問われ続けていく。

PR情報