九州から東北南部まで、やっと梅雨に入った。朝、水たまりに注意しながら歩いた道端のアジサイが細かい雨にぬれてしっとりと潤い、喜んでいるように見えた。
降りそうでほとんど降らない日が続いていた。ほっとした気分になった人も多かろう。今年は太平洋高気圧の勢いが弱く、梅雨前線の活動が活発でなかったため梅雨入りが遅れたという。
気象学者の廣田勇さんが著書「気象のことば 科学のこころ」で、専門用語の元をたどることで理解が深まる場合があると語っている。梅雨前線の前線は英語で「フロント」。ホテルのフロント、プロ野球のフロント、さらには車のフロントガラス。
戦場で敵と味方がにらみ合う戦線もフロントだ。異なる二つのものがあい接触する場を意味すると、廣田さんは説明する。なるほどそう考えれば、北の気団と南の暖かい空気のせめぎ合いの結果である梅雨入りが、年によって少々ずれるのも当たり前と思える。
西日本では5月、記録的に雨が少なかった。特に太平洋側では統計を取り始めた1946年以来最少で、平年の4割ほどにとどまった。四国では取水制限が始まっている。
ここから先、太平洋高気圧がいま少し盛り返してくれるだろうか。刺激を受けた梅雨前線により、平年程度の雨はほしいものだ。