日本経済は米欧より早期回復、年内2%成長へ

2009年 06月 11日 17:32 JST
 

 [東京 11日 ロイター] 世界経済の悪化に歯止めの兆しが見える中で、株式市場や商品市場にはリスクマネーが再び流入し始めた。しかし、動きの速いマネーに対し、実体経済は回復し始めた分野と悪化継続の分野、悪材料が目立つ国と追い風を受けた国など、まだら模様が目立つ。

 欧米先進国の経済停滞が今年いっぱい続く可能性が高い一方で、日本経済はいち早くプラス成長に復帰し、年内は風速2%程度の堅調な成長が続くと予想されている。欧米に比べて急激に落ち込んだ反動という面が強いが、輸出ウェートの高い中国経済が政策効果で高成長を持続しているほか、国内総生産(GDP)比5%程度の財政を動員した政府の経済対策も下支え効果を発揮している。ただ、設備投資の停滞と失業率の上昇など内需に期待が持てないこともあり、新興国を中心とした外需に依存しながら先進諸国の景気回復を待つことになり、来年以降も持続的に回復できるのか、展望は開けていない。

 <日本は一足先にプラス成長へ>

 日本経済は4─6月に早くもプラス成長に転換する公算となった。今週始めに発表された6月エコノミスト調査(内閣府フォーキャスト調査)では、4─6月期に前期比年率1.6%のプラス成長への転換が見込まれており、7─9月期、10─12月期は2%を超えるまでに成長率が高まる見通し。1─3月に前期比年率15.2%減と先進国の中で最悪の落ち込みを演じた日本経済は、一気に潜在成長率(1%前後)を上回る水準に浮上、欧米よりも早期に、しかも高い成長を実現する格好だ。

 もっとも、主因はこれまでの落ち込みが相対的に大きかった反動にある。日本は欧米と比べて自動車・一般機械・電子デバイスといった輸出型主要産業が約5割を占めるほどウエートが高く、世界的な需要の減少に伴ってこれまでに大規模な在庫調整に追われた。ここにきて在庫調整のめどが付き、実需の減少を上回る減産圧力がなくったことで反発力も大きく出た。加えて需要が減少し続けるという局面が終わったことが重なり、急反発となったことがうかがわれる。

 エコノミストや日銀内の一部では当初、反発は7─9月期になると想定していた。4─6月期に早まった背景には、国内や中国での財政出動が予想以上の効果をあげた可能性も指摘されている。

 日本の実質輸出に占める中国のウエートは16%にのぼり、米国の17.5%と肩を並べるほど。中国の影響を受けている東アジア全体では47%にのぼる。中国への実質輸出は2月、3月と前月比増加に転じた。4月には電子部品、樹脂、非鉄などの出荷が増加。台湾や韓国などは半導体関連部品の需要が回復し、日本の電子部品・デバイスの出荷は他産業にさきがけて2月に出荷が回復し始めていた。

 過去最大規模となった2009年度補正予算など国内経済対策による下支え効果も大きい。一連の経済対策の財政規模はGDP比で5%に上り、米国の4%をしのぐ。公共投資部分は7─9月期に効果が最も表れるとみられ、エコノミストが夏場には2%に成長が高まると予想する根拠になっている。高速道路料金の割引や環境対応車購入への補助、省エネ家電へのエコポイント導入などが消費の下支えの役割を果たした。5月景気ウォッチャー調査では、こうした政策効果が寄与したとの声が多く、現状判断は5カ月連続で上昇した。  続く...

 
 
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