2009年6月11日7時16分
【ロンドン=北沢卓也】民主党が政権運営のモデルとする英国を訪問した菅直人代表代行が10日に視察を終え、11日に帰国する。「官僚主導の打破」を言うはやすいが、実際にどう取り組むのか。衆院選が迫るなか、同じ議院内閣制で政権交代を重ねてきた英国の与野党議員らに助言を求めた。
「英国式」で菅氏が強い関心を示したのが、政権交代に備えて官僚が野党と政策を協議する仕組みだ。英国は日本と異なり、与党議員でも政府の役職に就かないと官僚と接触できないのが基本だが、任期満了が近づくと野党幹部が官僚と接触する慣行がある。
菅氏は8日、最大野党・保守党「影の内閣」のモード内閣府相と会談。同席者によると、モード氏は「地球温暖化問題で、影の内閣の関係する閣僚と各省事務次官を集めることを考えている」「協議の内容は一切公にされない」と説明したという。
長期政権を担ってきた自民党と省庁の関係は深い。民主党の資料請求の動きすら自民党に伝わるなかで、民主党の政策をどう官僚に浸透させるかは頭痛の種だ。菅氏は鳩山代表にメールを送り、日本でも野党と官僚による事前協議を認めるよう麻生政権に申し入れるべきだ、と伝えた。
9日には与党・労働党のゲイプス下院外交委員長と会談。「官僚の発言」が焦点になった。日本では政府方針について官僚が国会答弁をする制度があるが、ゲイプス氏は「英国では全くあり得ない。あくまで(政府内の)議員でないといけない」と言う。
菅氏と会談した他の議員らも、官僚による国会答弁や記者会見を否定。英国では官僚は政治的中立性を厳守して対外的発言を控え、どの党が政権に就こうと閣僚に忠誠を尽くすことが求められる。かたや日本では各省で定例の事務次官会見があり、民主党批判が展開されることもある。