北朝鮮:資金調達を強化 関連組織統合、後継体制作りか

2009年6月8日 15時0分 更新:6月8日 15時0分

 【北京・西岡省二】北朝鮮・朝鮮労働党が、金正日(キムジョンイル)総書記の統治資金関連組織を整理・統合し、資金調達力の強化を進めていることがわかった。北朝鮮指導部に近い関係者が毎日新聞に明らかにした。後継体制への移行の円滑化を図る狙いがあるとみられる。

 関係者によると、資金調達機関「39号室」が「38号室」を吸収合併する形で統合した。両組織は金総書記の統治資金との関連が指摘され、05年に米国の金融制裁で凍結されたマカオの銀行「バンコ・デルタ・アジア(BDA)」資金も管理していた。

 韓国側の資料によると、「39号室」は1974年、金総書記が権力基盤固めに使う外貨を稼ぐ機関として設立した。対外取引を担当する「朝鮮大聖(テソン)総局」や、核・ミサイル関連取引の決済関連が指摘される「朝鮮大聖銀行」などで構成される。同総局などの傘下企業約120社が国内の金・銀・亜鉛の鉱山・製錬所などの管理を独占し、水産物やマツタケの輸出なども手がけている。「金総書記の金庫番」と呼ばれた故林相鍾(リムサンジョン)氏が39号室第1副部長として組織を取り仕切っていた。

 一方、38号室は91年に設置され、平壌の「高麗(コリョ)ホテル」を含む宿泊施設や国内外の食堂、旅行業などで党資金を集めてきた。

 同関係者によると、39号室が生産部門、38号室が商業部門だった。だが、両組織とも事業を拡大した結果、両者が競合する形で外貨獲得事業や統治資金の調達・管理を展開。このため、党指導部が両組織の合理化を図り、5月までに改編を断行したという。同関係者は「後継体制への移行に向け、党がものすごい行政改革を断行している」と指摘した。

 ◇朝鮮労働党

 故金日成主席が唱えた北朝鮮の指導理念「主体思想」に基づき、国内のすべての活動を指導する独裁政党。1945年10月10日創設。党の最高意思決定機関は党大会で、5年に1回開催されると規定されているが、80年を最後に開かれていない。党トップは総書記で、金正日氏が97年に就任した。

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