きょうのコラム「時鐘」 2009年6月11日

 愛は進化するという。最初は小さな自己愛が、成長とともに肉親や恋人を思う愛に広がり、やがて人類愛に、さらには地球愛になる

W杯出場を決めて再び時の人になったサッカー日本代表の岡田監督が、2年前に金沢の講演で披露した愛の進化論である。が、優しい愛を語った監督も、選手と一緒に酒は飲まない、選手の仲人もしないと言う。監督業には、愛とは裏腹な冷徹さが求められるからだった

どんな名選手も、いつか力が衰え首を切る時が来る。普段から仲良くしていてはその非情な宣言はできない。仲良くなくていい。嫌いでもいい。互いに力を認めあうチームが強くなるのだと力説していた

同じ勝負の世界でも祖父伝来の「友愛」が看板の政治家・鳩山総務相に、愛の進化論は通用しそうにない。日本郵政社長の首切りには非情そのものだ。逆に総監督役?の麻生首相が非情になれないようで、党内は混迷の体である

ひとつの個人プレーがチームワークを乱し、手痛い敗北を喫することがある。「チームが勝つためには人を切る。勝てなかったら責任を取る」。岡田語録のさわりである。