国際通貨基金(IMF)のストロスカーン総裁と世界銀行のゼーリック総裁がこのほど、「大型景気浮揚策の後遺症としてハイパーインフレが発生する可能性がある」と声をそろえ警告した。市場の動きもおかしくなっている。米国の財政赤字拡大とインフレの懸念が合わさり米国債金利は3カ月で年2.5%から年3.9%に上昇した。国際原油価格も1バレル=70ドルを超えた。こうした急速な上昇をめぐり経済危機を脱したという単純な安堵感を超え、これから急激なインフレが起きるかもしれないというリスクを反映したものという分析が力を得ている。
企画財政部はこれに対し、「いまは需要が供給より冷え込んでいるだけにその不足分のデフレーションギャップを埋め合わせるのが急がれる」との立場だ。実際に5月の就業者数だけ見ても1年前に比べ21万9000人が減り、通貨危機以降では最大の減少幅を記録した。またすぐにハイパーインフレが急襲するとみる専門家はいない。しかしこれ以上景気浮揚にばかり固執する時期は過ぎたのは明らかだ。経済危機打開のためこれまで人為的に超低金利を維持し、多額の流動性を市中に放出したという事実に目を背けてはならない。いまはもう少し長い見通しで経済危機後の出口戦略を細かく手直しする必要があるとみる。
インフレを遮断しようとするなら市中通貨を吸収し財政支出を減らすのが一般的な解決策だ。問題は依然として経済の基礎体力が弱い状況で金利を引き上げ緊縮するのは簡単ではないという点だ。しかしこれまでのように景気低迷を防ぐために資金を放出し金利を下げるだけの機械的な対応には終止符を打たねばならない。遠からず景気回復と物価上昇阻止という2匹のウサギをつかまえなくてはならない難しい状況が近づいてくるのは明らかだ。政府と韓国銀行は経済動向により神経をとがらせ、どんな政策を選択するか深く悩むべき時だ。この10年を振り返ってみても誤った出口戦略がとてつもない災いを呼び起こしたケースは多かった。ドットコムバブルの崩壊と米同時多発テロ後の世界的な低金利と過剰流動性が結局サブプライムショックと世界の経済危機を招いたという教訓を忘れてはならない。