来年２月に武雄市民病院を移譲される医療法人財団「池友会」（北九州市）が、移譲先をグループの社団法人にするよう武雄市へ申し入れた。市は「移譲先追加」として６月議会に関連議案を提案したが、移譲まで８カ月に迫る中での突然の申し入れに「なぜ今」「運営に影響はないのか」など疑問や不安の声もあがっている。移譲先選考委員会の委員長を務めた信友浩一・九州大大学院教授も「移譲先変更で市民に不利益が生じないのか検証が必要」と指摘する。

　移譲先変更の理由について池友会関係者は、グループの組織再編で、池友会が福岡県で社会医療法人認定を目指していることなどを挙げ「社会医療法人になると（税制上の措置で）固定資産税が無税となり、武雄市の税収が入らなくなる」と説明する。

　ただ、この変更について民営化に反対してきた市議らは「事実上の契約相手変更。選考をやり直す必要はないのか」「巨樹の会の資産状況や医療内容は」などと疑問を呈する。

　「巨樹の会」の鶴﨑直邦理事長は今後、巨樹の会がグループ内の病院を買収するなど経営基盤を強化する方針を示した上で「移譲相手は再編後の巨樹の会。（移譲後の運営は）グループでやる。これまでどこの病院もグループ全体でやってきたし、どういう形かは別にしてバックアップする」と話す。

　昨年の移譲先選考にかかわり、経緯に詳しい信友教授は「両法人の法的な責任関係がどうなっているのか。移譲先変更で市民に不利益が生じないのか検証が必要」と指摘。一方、市民からは「市長選にまでなった問題。（一度決まった）議決をそもそもひっくり返していいのか」といった声もあがる。

　樋渡啓祐市長は「池友会グループの企業統治の問題であり（病院運営に）影響はまったくない。本来一つでやるところが二つになるわけだから市は心強い。名義変更にすぎない」と話す。

　民営化に反対してきた議員は今議会で、移譲先変更に関して説明を求める方針だ。

【写真】来年２月に民営化する武雄市民病院。移譲される予定の医療法人財団「池友会」は移譲先をグループの社団法人「巨樹の会」にするよう武雄市へ申し入れている