きょうのコラム「時鐘」 2009年6月10日

 なかなかできないことだが、ヤンキースの松井秀喜選手は試合後、決まって取材に応じる。出番はあったり、なかったり。気の早い「放出話」まで地元紙に書かれて、心中穏やかではないだろうに

きのうで18打席無安打。それでも「自分を信じてやるだけ」と、耐える言葉を口にする。好対照なのがイチロー選手で、打撃好調でも「皆さん、勝手にどうぞ」と、周囲をけむに巻く。その無愛想が魅力、と喜ぶファンもいる

比べるのも気が引けるが、随分と軽く響くのが政治家の言葉で、勇ましい発言ほど、要注意。首相がべらんめえ口調で「私が決める」と口にし、程なくブレて混乱を招いたことが何度あったろう

「これは正義の問題」と、見えを切った大臣もいる。大仰なせりふで、かっさいを期待しているのだろうが、手をたたくより先に、裏に何があるのだろう、と、マユにつばをつけてしまう

プロ野球人気が盛り返している。それはそうだろう。敵のエラーによる得点ばかり待つような政治ゲームを見せつけられるより、白熱した投手戦や華々しい打撃戦の方が、よほどすっきりした気分になれる。