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佐竹ガラス "輝き"作る繊細な職人技

 幼いころ、祭りの夜店で、裸電球の光に輝くトンボ玉やガラスの動物たちに心躍らせた人も多いのではないだろうか。そんなガラス工芸品の材料となるガラス棒を製造する工場が、大阪府和泉市の「佐竹ガラス」だ。砂や鉱物のくすんだ粉末を輝くガラスに変える職人の技に目を見張り、完成したガラス製品の数々にどこか懐かしさを感じた。(文・八木択真)

 流行で売れ筋変化

 JR阪和線信太山駅近くの静かな住宅街の一角。国の登録有形文化財に指定されている重厚な木造の工場は静けさに包まれていた。

 作業が始まる前の工場を通り抜け、先にショールームに案内してもらう。そこには色とりどりのガラスの玉や動物たちがずらり。「年配の人は懐かしさを感じるみたいで、『昔、親に買ってもらったなあ』という声をよく聞く」と社長の佐竹保彦さん(62)。きらびやかな品々は、工場見学で訪れる人たちのおみやげとして人気という。

 隣接する工房ではトンボ玉やガラスビーズづくりが行われていた。工場で作られたガラス棒をバーナーの炎で溶かし、銀ぱくや別の色のガラスを織り交ぜながら完成する色鮮やかなガラスの玉は、全国のアクセサリー店に出荷されていく。

 ショールームで人々の目を楽しませるガラス玉は、ファッションの世界では服を引き立たせる脇役。服の流行は刻々と変化するため、ガラス玉の売れ筋の色も毎年変わるという。

 “水あめ”一気呵成に

 ガラス棒作りが始まったのは午後1時。炉の熱で作業場は暑い。築約80年の工場にはクーラーなどはなく、夏場は蒸し風呂のようになる。中がオレンジ色に輝く溶解炉のるつぼから、職人が長い鉄の棒の先端に溶けたガラスを巻き付ける。トロトロの液体を徐々に外気で固くしながら何度もるつぼに先端を浸すと、棒につくガラスの塊が大きくなる。

 ガラスの原料は主に珪砂(けいしゃ)。そこに金や銅などの粉末を調合して色を出す。工場内の棚には色とりどりのガラス棒が保管されている。その数なんと160色で、どんな色でも作れるのだとか。

 工程で最も繊細さが要求されるのは、溶けたガラスを棒状に伸ばす「生地引き」。一定の固さまで冷ました水あめ状のガラスを、約20メートルある耐火れんがのレールの上に一気に伸ばす。この道25年のベテラン、菅谷光浩さん(53)は「伸ばす前に棒の先のガラスの形を整え、引きやすい固さにもっていくのが一番難しい」という。

 棒状になったガラスはすぐに固まり、切り分けられて保管される。

 強さとはかなさ

 ガラス作りは古代エジプトからシルクロードを経てアジアへと伝わり、日本でも弥生時代の遺跡からガラス製の装身具が出土している。

 和泉市周辺では明治時代にガラス作りが地場産業として根付き、昭和初期にはガラス棒工場が十数カ所あったという。しかし安い海外品に押され、他の工場は次々と姿を消していった。

 佐竹ガラスの技術への評価は高く、古代の遺跡から出土したガラスの装身具の復元を依頼されたこともあるという。佐竹さんは「試行錯誤しながら復元する作業は楽しいし、ロマンがあるよね」と顔をほころばせた。

 最後にガラスの魅力を尋ねると、「はかなさかな。強そうに見えて、ちょっとした拍子に割れてしまうから」と遠くを見た。力強い輝きと繊細な存在感が、人々の心をとらえるのかもしれない。

佐竹ガラス 大阪府和泉市幸2の11の30。昭和2年創業で、築約80年の木造社屋は国の登録有形文化財に指定されている。営業時間は午前9時〜午後5時で、日・祝定休。無料でガラス作りを見ることができる工場見学は、所要約1時間。1人から受け付けているが、事前予約が必要。併設の「流工房」ではトンボ玉作りなどを体験できるガラス工芸教室(有料・要予約)も開かれている。問い合わせはTEL0725・41・0146。

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