甘めのピント、レンズ周辺光量の低下、不自然とも言えるコントラスト…。デジタルカメラユーザーにしたら、どれもマイナス要素だが、実はこれがこのカメラの“味”だったりする。そう、最近さまざまなメディアでも取り上げられ、人気が高まっているアナログカメラだ。おもちゃのようなフォルムから生まれる、色鮮やかで遊び心たっぷりの一枚に心引かれ、東京・南青山の「Lomography Gallery Store Tokyo」を訪ねた。
「Lomography Gallery Store Tokyo」は、アナログカメラ「ロモグラフィー」の国内初の旗艦店として’08年7月に南青山に誕生。ロシア生まれの代表機「LOMO LC-A+(ロモ エルシーエープラス)」をはじめとするロモグラフィーの販売はもちろん、店内のギャラリースペースにて写真展示やイベントなども開催し、ロモグラフィーを愛用する人々、通称“ロモグラファー”たちの集いの場、スペースとして愛されているショップだ。店内には約30種のアナログカメラや数々のアクセサリーがそろい、カラフルでかわいらしいデザインが目を引く。近年ではタレントの若槻千夏がロモグラフィー好きを公言したり、俳優の瑛太が雑誌撮影に自前のロモグラフィーを持参したりと、芸能界でも人気、知名度が高まるアナログカメラ。デジタル全盛の時代に、これほどまで人々を引き付ける魅力とは一体何だろうか? 「Lomography Japan」代表取締役の浪上(なみのうえ)大輔さんに聞いた。
「アナログカメラの魅力は言い尽くせないですけれど(笑)、一番は“こんな写真を撮りたいな”と思う事に、自身の創意工夫で近づけることができる事だと思います。デジタルで撮れるものはデータである分、やはり与えられている写真かな、と。自分の感覚が及ばないような写真ができてしまうこともありますよね。一方、アナログカメラはデジタルに比べて手間がかかりますが、写真もやはりプロセスが大事。仕事でも遊びでもそうですけど、遠回りしたり、いばらの道を選んでみた分、それが自分の経験値になり、また、すごくハイになれると思うんです」。
アナログカメラを通じて、人と人とがつながる…そんなアナログな心の広がりもまた、ロモグラフィーの魅力だとか。
「ロモグラフィーはもともと写真共有というか、写真を見せ合ったり、自分の写真ブームを伝え合ったりという、ざっくばらんにコミュニケーションしていく楽しみを広げたいと思ってスタートさせたもの。例えば、“こういう写真撮りたいんだけど”とか、“偶然こんな写真撮れちゃったんだけど分かります?”という素朴な疑問を一緒に話せたらいいなと思っています。今月、ロモLC-Aの25周年のパーティーをショップで行います。ぜひ、みなさんに集まっていただいて、新鮮なアナログ写真の世界を共有したいですね」。
30~40代のアナログカメラ初心者にお勧めの機種は?
では、実際にどんなアナログカメラがお勧めなのか。はるか昔にフィルムカメラを使ったことはあるものの、最近はめっきりデジタル派という30~40代の方も多いのでは。そんな人たちにもお勧めの機種を聞いた。
「アナログカメラに初めて触れるに当たり、一番簡単で特徴が際立つのが“魚眼レンズ”を搭載した『FISHEYE(フィッシュアイ)』というカメラだと思います。使い方もすごくシンプルで、基本的にフィルムを入れてシャッターを押すだけ。被写体を真ん中において、できるだけ近づいて撮ると、大抵面白い写真になってくれますよ」。
薦められるがままファインダーをのぞいて見ると、いつも見ている平面の世界が一変。遠近感や奥行きが強調され、画面中央のターゲットがググッと迫ってくる独特の景色が広がる。これはパンチの効いた一枚が撮れそう! デジタルカメラにも交換用の魚眼レンズがあるが、10万円近くと非常に高価。こちらはレンズ、本体がオールインワンで税込み7980円(写真の商品はFISHEYE 2)。値段だけでなく、スタイリッシュの中にかわいさを残したデザイン性の高さや、持ち運びに困らないサイズと重量も大きなポイントだ。
もう1機種は「自分で写真工夫ができる」をコンセプトに作られたという「DIANA(ダイアナ)」。
「生産終了だったものを約2年前に復刻した『DIANA F+』は、レンズ、ボディーともにプラスチックで、すごくローテクなカメラ。レンズを変えることができるので、好きな写りを探求できるという魅力もあります。先ほどのフィッシュアイレンズだったり、ワイドアングルレンズだったり、クロースアップレンズだったり。今日はこういう写真を撮りたいな、というその日の気持ちでレンズを付け替えて楽しめる。それぞれのレンズの特徴をつかむことで、こんな見方もできるんだなっていう発見ができるカメラですね」。
デジタルカメラ同様、レンズを交換することで、さまざまな写真描写が楽しめるDIANA F+(税込9345円)。換えの4種類のレンズは「広角」「マクロ」「望遠」「魚眼」と基本のレンズをすべてカバーしており、この1セットがあれば写真表現の幅は格段に広がるだろう。「最近同じような写真しか撮っていない」という悩みの解消にひと役買ってくれるかもしれない。また、やはりこちらも値段の差は明らか。本体にレンズ4種類、アタッチメント1種類、ケーブルレリーズなど諸々をパッケージしたDiana F+デラックスキットは31500円。さらに各レンズのバラ売りも行っており、どれも“ちょっと試したいな”と思って手が届くうれしい値段設定になっている。
“ザ・フューチャー・イズ・アナログ”
利便性、汎用性、高性能を求め、無駄、手間を省く形で進化してきたデジタルカメラ。一方で、古き良き姿を残し、手間ひまがかかるプロセスにこそ面白さを見い出すアナログカメラ。どちらのカメラを選ぶかは、ユーザーが表現したい写真、撮影のシチュエーションによって選択すればよいだろう。だんだん興味は沸いてきたけれど、まだ一歩踏み出せないというあなた。ぜひ一度ショップをのぞいてみることをお勧めしたい。カメラ好きが集まるサークルのような雰囲気の中、すんなりとアナログカメラの世界に入れるはずだ。ちなみに私は取材後、すぐさま『FISHEYE 2』を購入した。次回は、自分なりの表現に挑戦したロモ写真をここで公開したいと思う。
最後に、これからアナログカメラを始めたいと思っている人たちへメッセージをもらった。
「“アナログ=古い”というイメージを持たれがちだと思うんですけど、そうではなくて、ロモグラフィーは進化するアナログなんです。スローガンは“ザ・フューチャー・イズ・アナログ”。アナログのカメラにも未来がある、だからこそ、あなたにもアナログカメラの世界を知ってもらい、未来に何かを見つけてほしいと思います」。
●Lomography Gallery Store Tokyo
東京都港区南青山4-24-8@ホームSQ. 1F
TEL:03-6418-7894
http://www.lomography.jp/gallery_shop/
■LOMO LC-A生誕25周年パーティー「WORLD LOMO DAY-oh It’s so 1984-」
[日時]09年6月19日(金) 19:00~
[場所] Lomography Gallery Store Tokyo
世界中に熱狂的なファンを持つアナログカメラ「LOMO LC-A」が09年6月19日(金)に生誕25周年を迎えるにあたり、Lomography Gallery Store Tokyoにて同日19時よりバースデーパーティーを開催。会場では、世界中から集められたロモ写真による、サッカー競技場サイズほどの巨大世界地図を発表する予定。また、日本各地で多くのロモグラファーとつづった写真、モーションピクチャーを発表するほか、25周年を記念して製作したさまざまな「LOMO LC-Aバースデープロダクツ」を展示する。※入場料無料
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