広がるペットの個体識別 マイクロチップで身元証明
2009/03/18 15:29更新
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■麻酔せず痛みもなし
空前のペットブームといわれる。一方で、迷子や災害、事故などにより保護されたペットの犬や猫の多くが、飼い主が見つからないまま殺処分されている現実もある。そうしたなか、ペットの確実な身元証明となるマイクロチップが静かな広がりを見せている。ペットの体内に簡単に埋め込むことができ、脱落することもないため、万一の場合、飼い主のもとに戻る可能性が高くなるという。(服部素子)
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記事本文の続き ◆直径2ミリ
マイクロチップは直径2ミリ、長さ8~13ミリの円筒形の電子標識器具。内部はIC、コンデンサー、電極コイルからなり、外側は生体適合ガラスで覆われ、チップそれぞれに世界で唯一の15けたの数字(番号)が記録されている。
番号は専用リーダーで読み取ることができ、マイクロチップによる動物個体識別のデータ管理を行う動物ID普及推進会議(東京都港区)に電話番号など飼い主データを登録しておけば、マイクロチップを埋め込んだペットが動物保護センターや保健所などで保護された場合、飼い主に連絡が届く。
また最近では、個体識別に加え、IC温度センサーを組み込み、体温測定もできる「ライフチップバイオサーモ」(輸入元・大日本住友製薬)といった商品も開発されている。
◆13万件
欧米をはじめ世界で広く使用されているが、日本での登録数は平成17年度末には1万件強にすぎなかった。こうしたなか、18年に改正動物愛護管理法が施行され、環境省がワニガメやクマなどの特定動物だけでなく、犬や猫などにも所有の明確化に向けてマイクロチップの装着などを行うよう告示したこともあり、同年度末には約6万3000件に、19年度は約13万件と急増した。
「大手のペット業者がトレーサビリティー(履歴管理)の意味も込めて、マイクロチップを埋め込んだ動物を販売し始めたこともあると思います」と、その背景を話すのは同推進会議の中村燈(あかり)さん。
また、18年に日本初のペット保険が金融庁から認可され、その条件にマイクロチップでの個体識別が採用されたことも一因とされる。
◆数千円
野良猫対策として「地域ねこ方式による所有者不明ねこの適正管理モデル事業」を展開する大阪市では、全国に先駆けて今年度から同市健康福祉局健康推進部生活衛生担当と大阪市獣医師会が共同で、同事業による避妊・去勢した猫の判別のため、耳カットに加えマイクロチップの埋め込みを実施。124匹に装着している。
同事業にかかわる獣医師会理事で、みゅう動物病院(同市淀川区)の本田善久院長は「通常の注射針より少し太いインジェクター(注射器)を使い、首の後ろの皮下2センチほど体内に無麻酔で注入します。一瞬のことで、副作用などもありません。一度体内に埋め込むと脱落もなく、データが書き換えられることもないので、確実な個体識別になります」とメリットを話す。
ただし、マイクロチップの埋め込みに数千円、データ登録には1000円の費用がかかる。
ペットフード工業会の調べによると、平成20年の犬猫の飼育数は約2680万匹。ペットは終生ともに暮らす“家族”という意識の広がりとともに、ペットの身元証明は今後、飼い主にとっての重要な責任となっていきそうだ。
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