2009年6月10日0時3分
世界的に、景気の悪化が和らいできたようだ。日本はいち早く景気が底入れした可能性があるし、米国でも住宅市場の悪化にブレーキがかかりつつある。
先走りかもしれないが、次なる関心は、危機後の経済がどのようになるかということだ。経済は危機前の姿に戻るのか、それとも危機前とは異なる世界が現れるのか。答えは後者だと思う。
第一に、世界経済は高成長から安定成長に移る。危機前の高成長の時代は、先進国でも新興国でも、行きすぎた信用膨張と資産価格の上昇(バブル)が、経済成長を実力以上に高めていた。それが持続不可能となった結果、経済危機、金融危機が生じた。米自動車企業の破綻(はたん)はその象徴である。
今後は、過剰化した設備や債務の削減が必要となる。その結果、06〜07年に年率5%まで上昇した世界経済の成長トレンドは、今後はその7掛けくらいになるとみられる。
第二に、経済金融の不安定性が高まる。危機前は、経済成長やインフレ率が長期的に安定していた。それが、景気や市場の変動リスクに対する過小評価をもたらすとともに、信用膨張とバブルを生み出した。ケインズは、資本主義、市場経済ではそもそも不均衡や不安定性が生じやすい、と主張した。
そこでは、価格メカニズムが円滑・迅速に機能せず、失業や過剰設備がしばしば生じる。過度の信用膨張によって、バブルやその後の金融危機も発生する。そして、そのような不均衡、不安定を埋め合わせるためにとられる金融緩和や財政支出の拡大が、さらなる不安定性をもたらす懸念がある。危機後は、インフレや為替レート、金利の急激な変動があるとみておいた方がよい。(山人)
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「経済気象台」は、第一線で活躍している経済人、学者など社外筆者の執筆によるものです。