舌ケアと舌苔
あまり知られていませんが、舌苔は防御反応として発生します。上部消化管の吸収障害があ る場合に舌の糸状乳頭の栄養血管に糖や蛋白質が増え、糸状乳頭の角化が亢進して伸びま す。これにいろいろな物が付いて舌苔が出来ます。 これは吸収障害で弱った粘膜を保護する目的と、消化管に食物があまり来ないようにするた めと考えられます。 したがって、上部消化管の症状を改善させれば、舌苔の症状は改善することになります。 舌苔と口臭 糸状乳頭そのものは、においがありません。舌苔内に定着する菌の性質によります。とくに、 嫌気性菌が定着すると、強い匂いを出します。嫌気性菌は、糸状乳頭が長ければ長いほど、 残渣物があればあるほど、定着しやすくなります。 正しい舌ケア 舌ケアと称して、舌苔を強い力でこすることを推奨している例がありますが、これはだめで す。舌苔がなぜ発生するかを考えれば、そのような行為にはならないはずです。舌苔の原因を はっきりと考慮した舌ケアをしないと、傷が付いたり、痛みが出たりします。 糸状乳頭を完全に除去することは困難ですので、 1)残渣物や老廃物を取り除くこと →軽い力(約50g)で、清掃しましょう。強い力は傷がつくので禁物。 2)細菌の定着を防ぐこと →菌の供給源である歯や歯肉ポケットの汚れも落としましょう。 3)糸状乳頭の長さを短くすること →上部消化管の機能を改善させる →唾液分泌を促す →口腔内を保湿する。 が大事です。 薬剤と舌ケア ○オキシドール オキシドールは、発泡作用があるので、舌苔内の嫌気性菌を弱らせるのに役立ちます。した がって、舌苔内の菌による口臭には効果的です。 ○絹水 保湿剤ヒアルロン散ナトリウムを含んだ「絹水」(生化学工業)は、舌苔を保湿することで、糸 状乳頭を正常化するのに役立ちます。口腔粘膜は、乾燥すると角化が亢進するので、糸状乳 頭の角化を押さえる目的で、保湿剤を使用します。保湿作用があり、口腔粘膜だけでなく、消 化管粘膜にも効果があります。「オーラルウェット」(ヨシダ)も同効製品です。 ×パイナップル 蛋白質を溶解する目的で、パイナップルなどを使う人がいますが、 口腔ケアで、使用するには危険です。糸状乳頭の角化部分だけでなく、正常な粘膜も溶かして しまいます。→したがって、要介護高齢者に使うのは禁忌です。健康な人は唾液も十分なの で、大丈夫ですが、、、 舌苔と反射帯(ツボ) 舌苔の除去には、「ツボ」も効果的です。拇指球と内関という「つぼ」を押すと、上部消化管の 機能が改善しますので、苔が薄くなります。 参考文献:「歯科医師・歯科衛生士のための舌診入門」、日本歯科評論2001年別冊、ヒョーロ ン社、2001.定価4800円 *押して痛みがある場合は、弱っていることを示します。1回30〜60秒、押します。1日に3〜 6回を基本にしましょう。約1週間で改善します。口から食べていない患者の症例ですので、ツ ボの効果によるものと思われます。
口は健康のもと
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