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西淀川女児虐待死事件 母はなぜ聖香さんを救わなかったのか

6月10日9時43分配信 産経新聞

西淀川女児虐待死事件 母はなぜ聖香さんを救わなかったのか
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松本聖香さん(写真:産経新聞)
 大阪市西淀川区の市立小4年、松本聖香さん(9)が虐待死した事件で、母親の美奈容疑者(34)=死体遺棄罪で起訴=の父親(65)が産経新聞の取材に応じた。内縁の夫の小林康浩容疑者(38)=同=の暴行を黙認し、わが子を救おうともしなかったとされる美奈容疑者。父親の話からは愛情に飢えていた美奈容疑者の姿が浮かび上がる。大阪地検は勾留(こうりゅう)期限の10日、両容疑者を保護責任者遺棄致死罪で起訴する見通しだ。

  [フォト]送検のため大阪府警本部を出る松本美奈容疑者

 ■幸せな家庭求め

 「聖香を守るべき私が守れず本当に悪いことをした」。美奈容疑者はこれまでの調べにこう供述しているが、その言葉と裏腹に娘を助けることはしなかった。

 かつて衣料品製造会社を経営していた父親によると、美奈容疑者は大阪市旭区で育ち、小学生時代に大阪府枚方市に転居。府内の私立高から短大に進んだ。

 だが、父親はこう振り返る。「美奈がどの高校に行き、どこの大学に通ったのか知らない。私は父親の役目を放棄していた」。父親は美奈容疑者が10代のころ、妻と不仲になり自宅に寄りつかなくなっていた。

 愛情に飢えていた美奈容疑者は平成9年、前夫(38)と結婚。父親は工場のある和歌山県御坊市に2人を呼び寄せた。美奈容疑者は10代のころの寂しさを埋めるかのように幸せな家庭を築き、11年に長女(10)を出産、翌年には聖香さんと三女(9)の双子を授かった。

 しかし、幸せな生活は長く続かなかった。工場経営が厳しくなり、美奈容疑者らは16年に前夫の実家がある大阪市西淀川区に引っ越した。

 ■失われるやさしさ

 「どこに行ってもみんなのアイドルでいつもにこにこしていたね。まだまだ甘えん坊の聖ちゃんだけど、優しい聖ちゃんのままでいてください」

 同区の保育所で18年3月に行われた修了式で、聖香さんに言葉を贈った美奈容疑者。そのころはわが子に愛情をたっぷり注ぐ母親そのものだった。

 父親は「小学生になってもおんぶをしていた。怒りたくなるぐらい甘えさせていた」と振り返る。

 だが、美奈容疑者が夫婦で開業したお好み焼き店もうまくいかず、住宅ローンも重なって生活が困窮するとともに、母親のやさしさは失われていった。

 修了式から数カ月後、生活費のために夜もファミリーレストランでアルバイトを始めた。大阪・北新地でホステスも始めた。家事はおろそかになり、19年ごろには台所は食べ残しで虫がわく状態。汚れた服を着た聖香さんが「ごはんを食べさせて」とマンションの住人に訴えたのもこのころ。前夫との関係も冷え切っていった。

 ■暗転

 そんなとき近くの飲食店で出会ったのが小林容疑者。聖香さんを連れて同居を始めた昨年秋、前夫と離婚した。やさしく接してくれる小林容疑者の姿は美奈容疑者にとって、娘以上に大切な存在に写ったようだ。

 「お母さんを助けたいし、おじちゃん(小林容疑者)の仕事も手伝いたい」と話していた聖香さんを小林容疑者はしつけと称して暴行、虐待は激しさを増した。「夜は怖いので朝まで待って」。4月4日夜、衰弱しながらも懇願する聖香さんをベランダに引きずりだすのを美奈容疑者は止めなかった。聖香さんは5日午後、ベランダで息絶えたが、そのころ美奈容疑者は美容院に出かけていたという。

 聖香さんの遺体と対面した父親は、表情が木の仏像のように感じられたという。「恨みがましい顔や怨念のこもった顔じゃなかった。きょとんとした感じで、母親を小林容疑者から守っているような顔にみえた」とつぶやいた。

 碓井真史新潟青陵大教授(心理学)の話「心の寂しさを埋めるような恋愛は、女性を従属的にさせる。美奈容疑者が正にそうで、父や前夫とのきずなを失い、気持ちに余裕がないときに出会った小林容疑者に精神的に依存してしまったのだろう。聖香さんへの虐待を制止できず、別れようともしなかったのはそのためだと考えられる」

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最終更新:6月10日9時43分

産経新聞

 

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