社説

東北で新型インフル/地域での課題対応が重要 

  ついに、新型インフルエンザの感染が東北にも及んできた。成田空港の機内検疫で初の感染者が確認されて1カ月。なお新しい感染者が日ごとに増え続けている中で、盛岡市の女性(36)がきのう、陽性と判定された。

 当初の緊張感が少し緩んではいないだろうか。この列島のどこにいてもウイルスの拡散から逃れられないことが、あらためて分かった。気を引き締め直して、これまで以上に冷静な対応を心掛けたい。

 女性の感染経路は、今のところ、はっきりしない。今月初めに修学旅行で千葉県船橋市から岩手県内に来て、帰った後に感染が確認された中学生と盛岡市内で接触した可能性があるという。

 これまでの感染例からすると、岩手県以外の周辺県にも発症が広がる恐れがある。自治体や医療機関、学校関係者は、油断なく対処してほしい。

 世界的には、冬に向かう南半球各国で感染が拡大中だ。東北での感染範囲が仮に小規模で、いったんは終息したとしても、今秋以降の第2波も不可避だ。その時は、毎年の季節性インフルとダブルで襲来する。

 相次いだ発生の経過と対応を踏まえ、来るべき大流行への教訓としなければならない。

 診療面では、発熱外来への患者集中の混乱をどう避けるか。簡易検査から遺伝子検査に移る迅速性を高めることも課題だ。国、自治体、医療機関、学校などとのスムーズな連絡調整が、初期の封じ込めには不可欠なことも分かった。

 予想外だったのは高校生を中心にした感染拡大だ。高校生の欠席を定点監視する仕組みがなく対応が後手に回った。患者に対するいわれのない中傷メールが殺到した問題、行きすぎの休校措置への反発もあった。

 政府が今回改定した新型インフルの対応指針は、全国一律の行動計画を改め、地域ごとの感染状況に応じた弾力的対応にシフトした。まずは、それがよりどころとなるだろう。

 新指針は、患者が急増した場合、軽症なら一般医療機関での受診や自宅療養を認めた。効率診療の面では前進だが、院内感染対策を講じた上でのことだ。その準備を地域でどう進めるかは、個別の問題として残る。

 学校の休校措置を流行の程度に合わせ、広範囲に行ったり緩和したりする場合も、それぞれの現場の判断が重要になる。

 今、どんな対策を打つのが有効か。その見極めの主体は、自治体に切り替わったとみるべきだ。とりわけ住民に最も身近な市町村の機敏さが問われる。

 厚生労働省の調査によると、地域レベルの行動計画を策定済みの市町村は全国でわずか6%。「策定の予定なし」が65%だった。地域で情報を共有し、きちんとしたルールに沿って行動できるようにしておきたい。

 現場の課題は、医療だけでなく教育や社会生活、財政面にも及ぶ。だが、危機から住民を守るという根本は、地震などの防災対策と大きく違わないのではないか。地域社会で秋までにやっておくべきことは多い。

2009年06月10日水曜日

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