クラスター爆弾禁止条約(オスロ条約)批准案が参院で可決されたのを受け、廃絶運動に取り組んできた関係者や非政府組織(NGO)からは、喜びの声が上がるとともに、「これを日本の軍縮外交全般を前進させるきっかけにしてほしい」と期待がふくらんだ。
クラスター爆弾や地雷に反対するキャンペーンに取り組むNGO「難民を助ける会」の長有紀枝理事長は「条約の署名の決定に時間がかかったが、批准までは非常に早くて良かった。これは国民一人一人の関心の高まりが政治を後押しした結果だ」と評価した。
さらに「私自身、クラスター爆弾が使われた現場を訪れた経験から、何よりも最初から使わないことの重要さを痛感した。条約には米中露など主要国が参加していないが、それでも爆弾を使わないという国際的な規範を作ることはできる。その意味でも、日本が条約を批准した意味は大きい。日本は規範づくりをリードしていくべきだ」と話す。
地雷やクラスター爆弾の廃絶に向けた募金活動や子供サミットなどを開催してきた「イオン1%クラブ」の原田昭彦委員長は「大変大きな成果で、新たなスタートでもある。これからも地道に取り組みたい」と話す。
条約案を決めた軍縮交渉「オスロ・プロセス」の会議に参加し続けた「地雷廃絶日本キャンペーン」運営委員、目加田説子・中央大教授は、オバマ米政権の登場で世界的に軍縮の機運が盛り上がっていることをあげ、「積極的に軍縮外交を推進することが日本の国際的評価につながる。まずは、オバマ大統領と協力し、米国のオスロ条約批准を働きかけてほしい」と求めた。
クラスター爆弾問題に詳しい国立国会図書館の福田毅・調査員は「規制の網を広げるよう努力し、(米中露などが参加する軍縮交渉)特定通常兵器使用禁止制限条約(締約国会議)でも主導的な役割を果たすべきだ。それは軍事バランスの安定化という軍事的目標と、人道的な目標の双方に合致する」と話す。【佐藤賢二郎、宮川裕章】
毎日新聞 2009年6月10日 10時51分