2009年6月10日 10時26分 更新:6月10日 10時52分
不発弾が市民を殺傷しているクラスター爆弾の保有や使用を禁じる「クラスター爆弾禁止条約(オスロ条約)」批准案が10日午前、参院本会議で全会一致で可決された。これで日本の批准が決まり、主要国ではドイツに次ぎ2カ国目、世界で10カ国目の批准となる見通し。非政府組織(NGO)や有志国主導の軍縮条約を日本が批准するのは、98年の対人地雷禁止条約以来2度目。早期批准で軍縮への強い意欲を国際社会に示した日本は、今後、廃棄とともに被害者支援や不発弾除去に取り組む。
今回の批准で、大国を含む国家間の軍縮交渉だけでなく、有志国やNGO主導の交渉という新たな手法が日本の外交に定着することが期待される。
これまで同条約を正式に批准した国はノルウェー、オーストリア、メキシコなど8カ国。ドイツも8日に国内手続きを終えた。
同条約は、批准国が30カ国に達してから約半年後に発効すると規定しており、発効後は▽同爆弾の使用・開発・保有・移転の即時禁止▽8年以内に保有分を廃棄▽10年以内に不発弾を除去▽被害者支援--などが義務付けられる。
子爆弾数が10個未満と少ない「最新型」は規制対象外とされたが、日本は欧州諸国のようには購入せず、全廃を決めた。防衛省は現在、廃棄方法を調査中で、代替兵器導入も検討している。
今国会には、同条約の規制内容を具体化した「クラスター爆弾禁止法案」も提出されており、近く可決される。この後、政府は条約批准の閣議了解を経て、受諾(批准)書をニューヨークの国連本部に寄託、批准手続きが完了する。
同爆弾を巡っては米露中などが参加する軍縮交渉「特定通常兵器使用禁止制限条約(CCW)締約国会議」で規制すべきかどうか検討されたが、議論が進まなかった。
一方で、06年にはイスラエル軍によりレバノンで大量使用されたため、07年にノルウェーなど有志国やNGOによる軍縮交渉「オスロ・プロセス」が始まった。昨年5月のダブリン会議で条約案に合意。昨年12月にオスロで日英独仏など94カ国が署名した。
日本は当初、安全保障上の理由などで規制に消極的な姿勢を示し他の参加国から非難を浴びた。しかし、人道上の懸念から昨年5月に賛成に転じた。【鵜塚健】
空中から投下、または地上から発射され、数個から数千個の子爆弾を広範囲にまく爆弾。大量の不発弾が発生する。NGO「クラスター爆弾連合」などによると、これまでイラクやアフガニスタンなど36の国・地域で使われ、1万3000人以上の死傷者を出した。最大1億3200万発の子爆弾が不発弾として残ると推定される。