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【主張】自民党提言 防衛力縮小で国は守れず
7年間続いている防衛費の削減方針の撤回を求める自民党の提言がまとまった。
日本の周辺では、どの国も軍事費を増やす傾向が続いている。その中で日本のみが防衛力を縮小しており、この地域のバランスを欠く要因にもなりつつある。
年末には、防衛力整備の基本方針を定める「防衛計画の大綱」が改定される予定だ。自民党の国防部会・防衛政策検討小委員会(今津寛委員長)は、改定に合わせて、これまでの予算と人員を減らす方針の「見直しが急務」だと打ち出した。
日本の平和と安全を守るために、この方向性は妥当なものだ。近く麻生太郎首相に提出されるが、政府は日米同盟の実効性を高め、自国を守り抜く姿勢を新大綱で明確に示せるよう対処すべきである。
5年前の大綱改定では、陸自の編成定数が16万人から15万5千人に減らされ、空自の戦闘機は約300機から約260機に、海自の護衛艦は50隻から47隻に削減された。さらに小泉政権下の骨太の方針06で「今後5年間、名目伸び率ゼロ以下の水準」とすることが決まった。
一方、中国の軍事費は21年連続で2ケタの伸びを示し、スウェーデンのストックホルム国際平和研究所が発表した2009年版年鑑では、昨年初めて米国に次ぎ世界2位となった。中国海軍は空母建造計画や潜水艦部隊の増強などが顕著だ。ロシアや韓国、台湾なども軍事費を増やし、兵力の近代化を進めている。
提言は「陸海空自衛隊のやりくりは限界を超えている」と指摘し、「安全保障能力の整備は一般の公共事業と同列に扱われるものではない」と訴えている。
財政再建の必要性を踏まえ、防衛費の効率化を図るのは当然だとしても、必要な防衛力の維持は国家の責務である。
また、提言は北朝鮮の弾道ミサイル防衛を念頭に、打撃力を米国に依存するだけでなく、日本自身が敵ミサイル基地を攻撃する能力を持つことの検討を求めた。巡航型ミサイルを開発する必要性も指摘した。北朝鮮の脅しに屈せず、必要な抑止力を備える確固とした姿勢を示すことが重要だ。
任務遂行に必要な人員や予算も確保できず、防衛力が弱体化している現実を防衛省・自衛隊は国民に説明する時期に来ている。