サウジアラビア、クウェート、バーレーン、カタールの4カ国が、将来の単一通貨発行を目指す通貨統合協定を結んだ。欧州通貨統合をモデルとした湾岸協力会議(GCC)諸国の試みは、もっと注目されていい。それと同時に、通貨統合に積極的だったアラブ首長国連邦(UAE)が、今回の統合協定に参加しなかったことにも注目すべきである。
UAE不参加の直接のきっかけは、統一中央銀行につながる通貨評議会の設置場所がサウジの首都リヤドになったことへの不満だった。だが、背景には、これまで自国の通貨価値を米ドルと連動させるドルペッグ制を基本としてきた国々が、ドルとの関係をこれからどう見直すかというより大きな問題が存在する。
今後のドルの地位ともからんで、通貨統合の行方と通貨をめぐる域内の葛藤を注視する必要がある。
GCCが「2010年に通貨統合」の目標を掲げたのは8年前。その後オマーンは参加を遅らせる決定をしたが、他の国々は昨年までの高率の経済成長と財政黒字の継続で、政府債務を国内総生産の60%以下に抑えるなど経済指標の収斂(しゅうれん)目標の多くをほぼ達成した。
不動産相場が高騰から下落に転じたことなどもあり、物価上昇率の収斂も視野に入り始めている。
それでも統合は技術的に難しく、4カ国による先行統合実現も数年遅れるとの見方が少なくない。さらに統合を広げるにはドルとの関係についての意思統一が必要になる。
UAEはかねて「徐々に為替相場の変動幅を広げ、15年には完全な変動相場制に移行すべきだ」(スウェイディ中央銀行総裁)との考えを示していた。米金利への追随を強いられて過剰流動性を抑えられなかったなどの不満があるからだ。
通貨統合はドルペッグ維持を唱えるサウジ主導で進み、4カ国統合も「ドルペッグになるだろう」(アティヤGCC事務局長)という。米政府は「切り上げは容認するが、ペッグ放棄は避けるべきだ」と各国に要請しているようだ。このためUAEも当面は通貨制度変更を自制するとみられるが、国際金融市場の中期的な焦点の一つとして通貨をめぐる湾岸諸国の動きから目が離せない。