内閣府が月末に閣議決定される「経済財政運営の基本方針2009」(骨太の方針09)の財政健全化目標の土台になる試算を示した。小泉構造改革の総仕上げともいうべき「骨太の方針06」に盛り込まれた基礎的財政収支(プライマリーバランス)の11年度黒字化目標のみならず、今年1月に内閣府が試算した18年度黒字化も困難との予測だ。最近の大幅税収減少と巨額の補正予算などによる、急速な財政悪化のためだ。
これを受け、「骨太の方針09」では、基礎的財政収支の黒字化を19年に先延ばしする。財政健全化の基本指標も国・地方合計の債務残高の対国内総生産(GDP)比に置き、20年代初めに安定的に引き下げることを盛り込む。中期を見据え、基礎的財政収支赤字のGDP比を5年を待たずに半減する目標も掲げる。
財政健全化は次の総選挙で自民・公明連立政権が続いても、民主党が政権の座についても、すぐに取り組まなければならない。そのためには、財政の正確な現状把握や予断を排除した中期、長期の財政収支展望が必要だ。次の政権は、それをもとに財政機能の回復に必要な施策を講ずることになる。内閣府試算は現政権の施策が前提という制約があるものの、財政が国民の広いニーズに応えられる状態に戻るのは、10年程度の時間が必要なことを示している。状況は非常に厳しい。
09年度の補正予算では医療、介護、子育てなどへの支出が重視された。10年度予算に向けてもこの基調が弱まることは考えられない。国民の将来への不安を取り払わないことには、経済の活性化も絵に描いた餅に終わってしまうからだ。
そこで、まず取り組まなければならないのは、歳出の抜本的見直しだ。小泉構造改革以来、歳出改革は叫ばれてきたが、基本は一律削減で、重点化は付け足しという状況だ。財政バランスの改善を図るためにも、歳出の各費目を組み替えることも含めて、全面的に見直すことは欠かせない。特別会計も同様だ。歳出・歳入一体改革を打ち出した「骨太の方針06」の微調整では全く不十分だ。
抜本的な歳出改革の次には、社会保障の機能強化と、それを支える財源確保措置が必要だ。政府は09年度予算の税制改正法の付則で税制抜本改革の実施を盛り込んだ。与党は社会保障の安定財源確保策をどうするのか。4年間は消費税論議をしないという民主党も、いずれ、国民負担増は避けられないことは認識しているはずである。
財政試算はあくまでも出発点に過ぎない。国民の安心のためどのような段取りで、何をするのか、与野党とも国民に示す責任がある。
毎日新聞 2009年6月10日 東京朝刊