1発の親爆弾から数百もの子爆弾が空中にばらまかれ、広い範囲で爆発が起きる。不発のまま地上に残った子爆弾が、地雷のように突然爆発して市民を殺傷する悲劇も後を絶たない。そんな爆弾の保有や使用を禁じる「クラスター爆弾禁止条約(オスロ条約)」批准案が10日、参院本会議で可決される見通しとなったのは実に喜ばしいことだ。
衆院は5月に可決しており、参院の可決によって条約批准が決まる。すでにノルウェー、オーストリア、メキシコ、アイルランドなどが批准し、ドイツも実質的に批准手続きを終えた。非政府組織「クラスター爆弾連合」(本部・ロンドン)によると、国連本部に批准書を寄託した国は8カ国にのぼるという。
これらの国々と並んで日本がいち早く批准にこぎつけることは誇ってもいいだろう。条約は30カ国が批准した時点から約半年後に発効する。批准した国は発効後8年以内に爆弾を廃棄する義務がある。日本も発効後は自衛隊が保有するすべてのクラスター爆弾の運用を直ちに停止し、期限内に廃棄することになる。
これに対し自民党などに防衛力低下を懸念する声があるのは確かだが、クラスター爆弾が日本の防衛にとって絶対欠かせない兵器かどうか。代わりに自衛隊が「精密誘導能力を有する装備品」導入を予定していることもあり、同爆弾の廃棄が直ちに防衛力低下につながると主張するのは難しかろう。
今後の課題は米国やロシア、中国など軍事大国の参加だ。米国防総省は2018年以降、子爆弾の不発率が1%以下の改良型爆弾のみ使うという。それまでは旧型爆弾を使い、外国にも旧型の輸出を続けるということだが、実に多種多様な兵器を持っている米国がクラスター爆弾のみにこだわることもあるまい。条約参加に向けたオバマ大統領の英断を期待したい。
米国は03年のイラク戦争以降、クラスター爆弾を使っていない。国際人権団体によると、昨年のグルジア紛争でロシアとグルジア両軍がクラスター爆弾を使い、民間人の少なくとも16人が死亡、54人が負傷した。レバノン領内でイスラエル軍が大量にクラスター爆弾を使ったことも知られている。ベトナムやコソボ、アフガニスタンでも使われた。
しかし、この兵器は、対人地雷禁止条約が99年に発効した時から全廃の運命をたどっているともいえよう。日本は同条約に参加し、各国の地雷除去にも協力して感謝された。クラスター爆弾についても、日本は軍事大国に、特に米国に条約参加を働きかけるとともに、被害者支援の面でも積極的に貢献すべきである。
毎日新聞 2009年6月10日 東京朝刊