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揺らぐ公立病院 黒字へ攻めの投資

2009年06月09日

 青森県黒石市の国保黒石病院は来年7月、脳神経外科の治療に、県内初となる最新機器を導入する。本体だけで10億円近い高額な機器を1年あたり数千万円でリース。16億4千万円もの不良債務を抱える同病院にとって、大きな投資だ。

 「若い医師が集まる環境をつくり、医療の質を上げるためには金もかけないと」と村田有志院長は話す。

 黒石市は財政難から、赤字の病院に十分な財政支援もしてこなかった。病院側はコンピューターシステムや給食の委託料を値引いてもらうなど節約に努めてきた。高額な最新機器導入は、ムダを省いた上での「攻めの投資」だ。

 約8割が赤字に苦しむ全国の公立病院。総務省は07年に示した公立病院改革ガイドラインで、3年程度で黒字化を求めた。

 朝日新聞のアンケートでは、黒字化への試みとして、東北地方の公立108病院の約5割が「契約や資材調達の見直し」をあげ、「病床を減らす」「給与を見直す」と答えた病院も約1割ずつあった。

 短期間で黒字化を達成した病院が、宮城県にある。公立黒川病院だ。

 05年度の収入は約13億円で1億5千万円ほどの赤字。それが、08年度は収入約21億円で数百万円の黒字に転じた。

 最大の要因は、医師が増えたこと。05年に就任した力丸暘(あきら)院長が出身大学などに積極的に声をかけ、常勤医は倍の12人に。外来患者は約1・5倍に増え、入院ベッドの利用率もあがった。力丸院長は「経営改善には、いい医者を確保し、良質の医療を提供するしかない。医者が来て、辞めない環境をつくることです」。

 西和賀町の国保沢内病院は、06年に3人いた常勤医の2人が相次いで退職し、患者が減って赤字に転落した。

 県は西和賀町に沢内病院の病床減や無床化を促した。昨年11月、人口約7千人にすぎない町は、1カ月の間に15回を超える説明会を開いた。

 説明会での住民の声も判断材料に、町は病院規模の維持を決定。人工透析の再開やリハビリ部門の新設などで収益を確保する方針を決めた。

 5月1日。沢内病院に35歳の若手医師が着任した。「小規模な病院で地域医療に挑戦したい」とこの医師は言う。

 これで常勤医は以前と同じ3人に。黒字化を目指す態勢が、整った。

=おわり

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