駒野欽一大使
海賊行為が頻発しているアフリカ東部ソマリアを担当する駒野欽一・エチオピア兼ジブチ大使が朝日新聞の取材に応じ、「海賊が現地の若者たちのあこがれの職業になっている」と、根本的な解決が難しい現状を語った。一方、現地に海上自衛隊艦艇を派遣しても「海賊と交戦する事態にはならない」との見通しも示した。
大使によると、海賊の多くは沿岸を拠点とする元漁民で、無政府状態になった91年以降、当初は漁場を荒らす外国の漁船を追い払う目的で武装。その後、私兵集団と結びついて人質の身代金狙いの海賊行為に手を染めるようになったという。
海賊のリーダーは現地では「最も女性にもてる存在」という。荒稼ぎした金で海岸の一等地に豪邸を建て、豪華な結婚式を挙げる様子がアフリカの新聞や雑誌で取りあげられ、豊かな生活の「象徴」にもなっているという。海賊は自動小銃やロケット砲で武装し、複数の高速艇で襲いかかるのが手口。しかし、護衛艦が守っている船隊に近づくことはないという。
アフガニスタン大使も務めた駒野氏は「アフガンでは金もうけのために貧困層がケシ栽培に走ったが、同じことがソマリアでは海賊として起きている」と指摘。国際社会が連携してソマリアを破綻(はたん)国家から抜け出すよう導かない限り、海賊問題の根本的な解決にはならないとしている。(玉川透)