<世の中ナビ NEWS NAVIGATOR>
次期衆院選の政権公約(マニフェスト)作成へ向け、出遅れ気味だった自民党のプロジェクトチーム(PT)が始動した。いったんPT座長に決まりかけた菅義偉選対副委員長が国会議員の世襲制限などを提起したことで党内の反発を受けて辞退し、再び説得されて就任するドタバタ劇。PT座長は消費税率引き上げなどの難しい利害調整役で、火中のクリを拾いたくない党幹部が押しつけ合う構図は党執行部の求心力低下を印象づけた。【高山祐、山田夢留、塙和也】
9日のPT初会合は細田博之幹事長ら幹部だけで行われた。石原伸晃幹事長代理が冒頭、菅氏を座長に推薦。園田博之政調会長代理らが説得した。会合後、菅氏は「私は固辞したが、他の全員が『私に』だった」と硬い表情で語った。
そもそも「菅座長」は麻生太郎首相の意向によるもので、菅氏自身も当初は内諾していた。中堅・若手をメンバーに集め、世襲候補の立候補制限などを押し切る構想を描いた。ところが、当選4回の菅氏の座長起用にベテラン議員が反発し、先月に入り、菅氏が「党に迷惑を掛ける」として座長を辞退した経緯がある。
後任人事は難航。古賀誠選対委員長から座長就任を打診された園田氏は「やりたくない」と拒否。石原氏らも当初から及び腰だった。結局、細田氏が7日に首相と会談して「菅座長」を確認し、渋る菅氏を押し切った格好。ある若手議員は「党幹部がみんな責任を押しつけ合っている」と嘆いた。
公約を巡る党内の意見対立は9日の総務会でも表面化。山本一太参院議員が「麻生首相が消費税の増税を書き込むなら、議員定数削減や無駄の排除も書くべきだ」と指摘。津島雄二党税制調査会長が「無駄とはどういう意味か」とかみついた。
また、自民党の「無駄遣い撲滅プロジェクトチーム」の河野太郎衆院議員らは9日、園田政調会長代理に対し、09年度補正予算に盛り込まれた「国立メディア芸術総合センター」の予算117億円の執行停止を要請した。センターは民主党が「アニメの殿堂」と皮肉って「無駄遣い」批判しているが、思わぬ身内からの批判に塩谷立文部科学相は9日の記者会見で「大変遺憾」と不快感を表明した。
内閣支持率の低迷が続く中、次期衆院選への不安が党内に広がっており、批判は麻生首相に向かいつつある。9日の総務会では、首相が東京都議選候補の応援を始めたことに対し、東京選出の衆院議員、伊藤公介元国土庁長官が「過疎地などに行った方がいい」とやんわり「拒否」。ある党幹部は「みんなが、てんでばらばらに好きなことを言っている」とため息をついた。
毎日新聞 2009年6月10日 東京朝刊