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【SID】高輝度のフルカラー動画表示を実現したシースルー型の眼鏡型ディスプレイ,ソニーが開発

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2008/05/22 19:48
田中 直樹=日経マイクロデバイス
試作したシースルー型の眼鏡型ディスプレイを装着(1)
試作したシースルー型の眼鏡型ディスプレイを装着(1)
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試作したシースルー型の眼鏡型ディスプレイを装着(2)
試作したシースルー型の眼鏡型ディスプレイを装着(2)
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基本的な表示原理と構造
基本的な表示原理と構造
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ホログラフィック導光板を2枚にして色の均一性を改善
ホログラフィック導光板を2枚にして色の均一性を改善
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 透過率85%,輝度2500cd/m2のフルカラー動画表示を実現したシースルー型の眼鏡型ディスプレイを,ソニーが開発,「SID 2008」で発表した。フルカラー動画を,実際の景色と重ねて見ることができる。今回,同社はMP4プレーヤの試作機として開発した。オーサーズ・インタビューでは実際の動画表示を確認しようとする技術者で,試作機の前に長蛇の列ができた。

液晶パネルを使った眼鏡型で,明るいシースルー表示


 同社は今回の開発に当たって,以下の4項目を実現しようと考えた。(1)暗い場所でも使える80%以上の透過率,(2)テレビに匹敵するΔu'v'=0.009以下の色均一性と,屋外でもシースルー・モードが使える2000cd/m2以上の輝度,(3)通常の眼鏡と同様に前面部(レンズの部分)の厚さを3mm以下に抑えられるように,光学エンジンを側面部(つるの部分)に装着できるようにすること,(4)2時間連続して装着しても不快にならないように,重量を80g以下に抑えること,の四つである。

 これらを実現するために,同社は,機器の構造をシンプルにすることにこだわった。そこで,LED光源と透過型液晶パネルなどから成る光学エンジン,およびホログラフィック導光板から構成される,今回の構造・表示原理を採用した。透過型液晶パネルで変調されたLED光が,ホログラフィック導光板を通して,目に入る仕組みである。光学エンジンは側面部(眼鏡のつるの部分)に装着できる。

独自開発のホログラフィック導光板


 今回の構造・表示原理を可能にしたキー部品が,ホログラフィック導光板である。厚さ1.4mm,長さ50mmのガラス製導光板の表面(外側)の2カ所に,ホログラム・フィルムを張り付けたものである。このホログラフィック導光板に入射した光は,まず第1のホログラム・フィルムで反射(回折)される。その後,ガラス製導光板の中で全反射を繰り返し,最後に第2のホログラム・フィルムで目に対して垂直方向に反射(回折)される。

 ホログラム・フィルムは,特定の色(波長)の光を,一定の方向に反射(回折)させる。他の色(波長)の光は透過する。反射(回折)させる光の色(波長)や反射の方向は,ホログラム・パターンによって制御できる。今回ソニーは,RGBの3原色に対応する3枚のホログラム・フィルムをそれぞれ独自に開発した。ホログラム・フィルムは導光板に対して斜めに設置する必要はない。導光板に対して平行に設置しても(導光板表面に張り付けても),任意の方向に光を反射できるため,機器全体の薄型化に向く。

クロストーク対策で,色の均一性を改善


 この3枚のホログラム・フィルムを単純に積層すると,色(波長)によって反射(回折)方向がわずかに異なるため,クロストークが生じて表示画像の色の均一性が劣化してしまう。このため,G(緑)用のホログラフィック導光板と,R(赤)とB(青)用のホログラフィック導光板をそれぞれ作り,この2枚を重ねることにした。それでも,全体の厚さは3mm(1枚当たり1.4mm。2枚の隙間が0.2mm)に抑えられている。また,色再現範囲はNTSC比120%,色の均一性はΔu'v'=0.008を,それぞれ達成した。

 動画表示の画素数はQVGA,コントラストは50:1,試作機の重量は120gである。透過率は,アンチリフレクション型の反射防止フィルム付きで85%を達成した。実用化時期は「未定」(同社)だが,技術的には「2010年ごろに実用化できるように開発を進めたい」(同社 情報技術研究所 ディスプレイ研究部 統括課長の武川洋氏)と言う。

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