【第33回】 2008年04月07日
ベビーパウダーも危ない! アスベスト被害急増の恐怖
タルクによるアスベスト曝露をめぐっては、1990年代から労災被害が明らかになっており、重度のアスベスト曝露によってしか発症しない石綿肺まで確認されている。もはや「タルクは安全」との主張は幻想にすぎない。
タルクだけではないアスベスト含有原料
「ベビーパウダーはかなり大量に広範に一般家庭で使われているため、乳幼児や子どものときに粉を吸っていた人の被害が続出することもありうる」
中皮腫・じん肺・アスベストセンターの永倉冬史事務局長は懸念を募らせる。
前述したように、厚生省の指導で1987年以降、ベビーパウダー用のタルクに関しては一定量のサンプル調査でアスベストを含まないことを確認して使われている。
だが、1986年以前は調査すら実施されていないし、付け加えれば現在も全量調査を行なっているわけではない。この先、ベビーパウダーによるアスベスト被害が出ないと誰が言い切れるだろうか。
しかも、アスベストを不純物として含む物質はタルクだけではない(下表参照)。バーミキュライト(ひる石)、繊維状ブルサイト(水滑石)、セピオライト(海泡石)、蛇紋石。「こうした原料を使用していた工場でも被害が発生する可能性がある」(永倉事務局長)。
実際、バーミキュライトの鉱山がある米国モンタナ州リビーでは、労働者と住民の約1200人がアスベスト関連疾患を発症し、うち約200人が死亡する被害を出しているのだ。バーミキュライトもタルク同様、広く使われている。
危ないのは、よく知られているアスベストだけでは決してない。タルクのような原料が広く使われている以上、アスベスト被害の拡大は必至である。
(ジャーナリスト 井部正之)
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