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【どうなった?ニュースその後】

多摩川沿い自転車事故多発(東京都府中市など) 安全な道へ 官民が施策

2009年6月9日

今年1月のたまリバー50キロ。さまざまな自転車、歩行者が行き交う=東京都府中市で

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 初夏を思わせる陽気に包まれた五月二十三日の土曜日、東京都府中市の多摩川河川敷の道は、サイクリングやジョギングを楽しむ人の姿が絶え間なかった。

 その道端に集まったのは、警視庁府中署員や市職員、市内の自転車店主ら約四十人。署員らは行き交う自転車の人たちにチラシを配り、安全走行を呼び掛けた。

 こうした顔触れで関係者が連携し、河川敷で事故防止のキャンペーンを開くのはこの日が初めて。遠藤秀雄・都自転車商協同組合府中支部長(59)は「業界の一員として、事故防止の手伝いをしたい」と思いを語った。

 多摩川沿いの歩行者・自転車道「たまリバー50キロ」で、自転車絡みの事故が相次いでいることがマスメディアで取り上げられ、警視庁は対策に本腰を入れ始めた。

 同庁交通規制課が集計したところ、昨年は三十七件の人身事故の届け出があった。発生は下流の大田区から福生市まで六市区に及び、自転車と歩行者が衝突する形態が半数以上を占めた。

 同課は今春から、地域ごとに、たまリバー50キロを管理する自治体や管轄警察署、河川敷を所有する国交省京浜河川事務所を交えた会議を開催。啓発活動の推進や注意喚起の看板の設置など短期的対策、歩行者と自転車の分離や道路の拡幅など中長期的対策について議論を始めた。

 中でも対策を急いでいるのが、事故多発地帯の府中市。道がよく整備された同市では、昨年は重傷事故を含む二十三件、今年も四月までに十件の事故が起きている。

 市は本年度予算に、速度抑制の凹凸舗装などのために約四百五十万円を計上。隣接の調布、国立市と同じ日に啓発キャンペーンを開催したり、共通の看板を設置したりする構想を練っている。

 「財団法人日本サイクリング協会」も今年、神宮外苑サイクリングコース(新宿区)で、スポーツタイプの自転車の初心者向け教室を開く予定。今後、多摩川河川敷での教室開催を目指す。

 「健康」「エコ」と自転車の長所が注目され、愛好家が急増する一方で、マナーの徹底は遅れ気味だった。同協会の小林博さんは「多摩川に限らず、江戸川や荒川沿いの道でも同じ問題を抱えている」と指摘する。

 二十三日の府中市のキャンペーンでも、署員らの呼び掛けを無視して走り去ったり、「自転車を締め出すのか」と大声を上げて詰め寄ったりするサイクリストも見受けられた。

 警視庁交通規制課の担当者は「せっかく整備された道路なので、自転車も歩行者も安心して楽しめるようになれば」と話す。

 自転車事故の多発は、河川敷だけではない。二〇〇七年には都内で、自転車が第一当事者となる事故が五千六十八件発生し、十六人が死亡している。自転車の事故防止は、社会全般にかかわる課題になっている。 (北川成史)

あのとき

 東京都は昨年七月、大田区から羽村市まで十市区にわたり、多摩川左岸に続く約五十三キロの歩行者・自転車用の道路に、公募で「たまリバー50キロ」と愛称を名付けた。マップも作り、サイクリングやウオーキングなどの場としてPRを始めたが、道路は近年、サイクリング人気の高まりで自転車絡みの事故が多発。道を管理する市区や警察、愛好家などの連携した対策が不足していた。本紙は三月十二日付夕刊で、この問題を取り上げた。

 

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