【ニューヨーク小倉孝保】北朝鮮の核実験で追加制裁決議案採択を目指す国連安全保障理事会での交渉は一両日中に最終合意に至る可能性が強まってきた。しかし、追加措置に対する中国の抵抗で、制裁内容は確実に薄まりつつある。日米が目指した「実効性のある決議」になるかどうかは微妙な情勢だ。
各国が今回、優先したのは、「安保理の一致した行動」だ。それによって北朝鮮に強いメッセージを出せるとの思いがあった。しかし、「一致した行動」を優先するばかりに中国が難色を示す制裁項目について、それぞれ妥協点を探す必要があった。
中国も当初、強いメッセージを出すことに合意していた。しかし、実際の制裁項目の交渉に入ると、「いつも通り中国は厳しい制裁に反対」(西側外交筋)。日米が作成した制裁案が厳しいものだったため、北朝鮮の混乱を危惧(きぐ)する中国が慎重になったとの見方もある。
そのため日米が主張した公海上での船舶の強制検査(臨検)について中国は「船舶の所属国の同意の上」で検査を行うよう主張し事実上、骨抜きにした。そのほかの貨物検査について日米は当初、「あらゆる措置」での義務化を主張したが、中国の抵抗で「禁輸物資が積載されている根拠がある場合」と限定するなど検査範囲を縮小。中国側はさらに検査の条件を絞るよう主張しているという。
米国のオバマ政権は国際協調を基本にしており安保理交渉を粘り強く続ける一方、「米国独自の制裁に力点を移した」(外交筋)との見方も広がっている。
北朝鮮による4月のミサイル発射と先月の核実験が、安保理決議に違反しているのは明白で、この点について安保理各国に異論はない。しかし、今回の新決議案作成交渉は2週間以上が経過。前回06年の核実験で、5日後に制裁決議が採択されたのと比べても交渉難航は明らかだ。
毎日新聞 2009年6月9日 20時42分