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時評コラム

財部誠一の「ビジネス立体思考」

ついに始まった
日本空洞化の戦犯は誰か

気が付けば日本空洞化という事態に

 冒頭で東芝やシャープが日本から一部製品の生産撤退を決めたと記したが、これは序の口だ。本当に残念でならないが、日本の大手製造業は日本という国そのものに愛想を尽かし始めた。2000年代前半、多くの日本メーカーは国内工場を新たに立ち上げ、相当の雇用創出を実現した。それは出口の見えない地方経済にとっても大きな意味をもったはずだ。その前提が製造現場への派遣労働を認めたことだった。

 たしかに派遣切りしたメーカーにも問題はあった。いかに法律の範囲内とはいえ、契約期間満了前にいきなり派遣労働者のクビを切るという経営判断は社会的責任の放棄に等しい。しかし、だからといって国をあげて企業叩きに明け暮れた日本という国は、私たちの生活や雇用がグローバルな国際競争の上に成り立っているという現実に対してあまりにも鈍感すぎた。

 人件費は高く、法人税も高く、法律で定められたルールのなかで雇用調整を行えば袋叩きにあう。たとえばトヨタ自動車を例にとると、国内の販売台数は世界全体のもはや1割台にすぎない。日本に本社を置き、日本で高い法人税を納めなければならない理由はもはや存在しない。

 日本を代表するエレクトロニクスメーカーの経営トップに、これからも国内生産を続けるかと尋ねてみると、ポロリと本音が漏れた。

 「あれだけ(派遣切り)批判されたら、もう好きにさせてもらいます、という気分になりますね」

 2010年に世界経済が回復の兆しを見せた時に、気がつけば日本空洞化というリスクが急速に高まっている。全体最適に一切配慮せず、人気取りに明け暮れた政治家とマスメディアは自らがその戦犯であることを自覚しなければいけない。

財部誠一(たからべ・せいいち)
1980年、慶應義塾大学を卒業し野村證券入社。出版社勤務を経て、1986年からフリーランスジャーナリスト。1995年、経済政策シンクタンク「ハーベイロード・ジャパン」設立。金融、経済誌に多く寄稿し、気鋭のジャーナリストとして活躍。テレビ朝日系の『サンデープロジェクト』、BS日テレ『財部ビジネス研究所』などに出演。
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