2009年6月9日(火)
2009年06月08日11時48分
「派遣切り」などで職と住まいを失う人が後を絶たない中、ホームレスら生活困窮者を受け入れる低額の宿泊所をめぐるトラブルが増えている。施設内の暴力ざたや法外な利用料、劣悪な住環境…。実態が不透明な施設も目立つ。支援団体への相談も相次いでおり、「貧困に付け込んで利益を上げる貧困ビジネスだ」との批判も出ている。
「宿泊所に入所しないなら生活保護は支給できない」。家電メーカーから昨年末、退職に追い込まれ住居も失った浦安市の男性(40)は生活保護を申請した際、福祉事務所の担当者から言われた。頼れる身寄りや所持金もなく、2月に宿泊所に入った。
数十人が暮らすアパート。ついたてで仕切られた4畳半のスペースに、初対面の男性と2人で暮らす。月額約12万円の生活保護費から施設使用料や食費、光熱費を払い、手元に残るのは約3万円だけだ。
「われわれが断れば彼らはどこに行けばいいのか。入所者のうち2割強が仕事を見つけるなどして自立していく」。宿泊所の運営業者はこう強調するが、男性は「プライバシーもなく、部屋には布団だけ。早く抜け出したいが、先立つものがないと転居もできない」と訴える。
「無料低額宿泊所」は社会福祉法に基づく施設。厚生労働省によると、全国に415施設。無届けの施設も多く、全体数は把握していないという。
さいたま市で困窮者らを支援する特定非営利活動法人「ほっとポット」には入所者から「寮長に殴るけるの暴行を受けた」「通帳から勝手に利用料を天引きされた」など年間約30件の相談が寄せられる。藤田孝典代表理事は「施設内のトラブル、苦情を受け付ける外部の窓口がない。何をされているのか全く分からない状態」と指摘する。
割安な利用料で宿泊所を運営する業者もあるが、貧困問題に詳しい森川清弁護士は「悪質な業者は収益を上げるため、入所者を長くとどめておくのが特徴。そうした業者が多いとみられるが、福祉事務所が『とりあえず入れておけば楽だ』と寄り掛かっているのが問題だ」と話している。
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