政界は心肺停止状態に陥る:永久寿夫(PHP総合研究所常務取締役)(1)

Voice2009年5月26日(火)17:26

自力による与党の支持率回復

政治の風向きはよく変わる。もし数カ月前に解散総選挙が行なわれていたら、いまごろ民主党政権ができあがっていたはずだが、10%そこそこだった麻生内閣の支持率は20%台半ばまで回復し、一時は民主に逆転された自民党の政党支持率も、再逆転である。

民主のある幹部は私的会話のなかで、いま総選挙となったなら勝敗は5分5分といささか悲観的な予想をしていたが、実態はもっと厳しく、前哨戦である千葉と秋田の知事選では、民主支援の候補が軒並み自民系候補に敗れている。4月26日の名古屋市長選の結果は、本稿執筆の段階ではわからぬが、下馬評優勢の民主推薦・河村たかしが勝ったとしても、彼が党内の反逆児であったことを踏まえると、民主の巻き返しとは素直には評価できない。

風向きを変えたのは、もちろん西松建設にかかわる企業献金問題である。小沢一郎はかつて自著『日本改造計画』(講談社)でこう書いた。「政治資金絡みのスキャンダルが相次いだことで、国民の政治不信は議会制民主主義の根幹を揺るがすまでに高まっている」「どうすれば国民の不信を解消することができるか。まず、政治資金の出入りを1円に至るまで全面的に公開し、流れを完全に透明にする」「さらに、企業や団体による政治献金は政党に対してのみとし、政治家個人への献金は禁止してもいい」「政治資金規正法違反者に対する罰則を強化し、政治腐敗防止制度を確立すべきである。具体的には、違反者を公民権停止処分にし、違反の言い逃れを封じるために連座制も強化する」(傍点筆者)。

小沢が自分の信念に誠実ならば辞任は当然のはずだが、1993年の自民離党以来の悲願達成を目前に、エゴを丸出しにしてしまった。党内からも声が上がったように、クリーンが売り物の岡田克也副代表あたりにその座をすぐさま譲っていればいざ知らず、国民の不信の対象は、閣僚が世界に醜態を晒したり、未曾有の経済危機に効果的な手が打てず、ひいては離党者を出すほどガバナンスがガタガタになっていた政府与党から民主に移ったのである。

一方、政府与党が支持率を回復しているのは、敵失だけが原因ではない。北朝鮮のミサイル発射に際し、イージス艦やパトリオットミサイルを配備して迎撃の姿勢を見せたこと、また、国連による非難のイニシアティブをとるとともに自主制裁を強化したことは、政府の信頼感を高めたはずだ。北朝鮮に対する毅然とした態度は、小泉政権でも支持率アップの特効薬であった。

政府が4月10日に発表した追加経済対策も、政府与党に追い風を与えている。事業規模総額56.8兆円、真水部分の財政支出が15.4兆円。2009年度の実質DGPを2%ほど押し上げ、40万〜50万人の雇用を創出するという目論見であり、赤字国債の発行も辞さない。三位一体という中途半端な地方分権改革によって財政難にあえぐこととなり、「ムダ遣い」の徹底的な排除に身を削る努力をしてきた自治体からすれば、脱力するほどの「バラマキ」ではある。

また、「失われた10年」の真っ只中、橋本政権16兆円(98年4月、総合経済対策)、小渕政権24兆円(98年11月、緊急経済対策)および18兆円(99年11月、経済新生政策)、森政権11兆円(2000年10月、日本新生新発展対策)と立て続けに大型の財政出動を行なったにもかかわらず、効果が期待以下だった事実を振り返ると、今度も借金の山を大きくするだけではないかと疑問は残るが、これほど急激かつ大きく景気が悪化すると、何でもいいから対策を立ててくれとなる。

当初は不評を買った定額給付金も貰えば嬉しくなり、経済対策の規模も過去最大となれば違う結果になるだろう、と根拠のない期待も高まる。

民主も4月8日に「生活・環境・未来のための緊急経済対策」を発表したが、政府案と重なる部分もあれば、規模も2年間で真水の財政出動21兆円となっており、比較するのが難しい。じっくり読めば優劣の判断もつこうが、求められるのが迅速な対応だとすれば、いま現実に権力を握る政府与党が有利なのは間違いない。

ねじれ解消でも危機は続く

麻生総理にとって、いよいよ解散総選挙の時期が到来したわけだが、具体的にいつになるかは判断が難しい。補正予算成立後の5月に解散、6月初めに総選挙というのが有力な予測だが、経済対策を実施していくにも効果を見るにも時間が必要となり、任期満了9月総選挙の可能性も否定できない。

「政局より政策」を主張してきた以上、政策の責任を果たすために後者を選ぶ可能性が高いと考えるが、勝機に対する麻生総理の勘次第である。いずれにしても、次は政権交代が起こるという少し前までの「常識」は消えた。

選挙後の勢力分布はどうなるのか。フジテレビ「新報道2001」が4月9日に行なった調査では、政党支持率は自民28.2%、民主23.2%、公明4.8%、以下、共産(2.2%)、社民(0.8%)、国民新党(0.4%)と続き、もっとも多いのが「まだ決めていない」の38.0%である。

もちろん、これが選挙結果にそのまま反映されるわけはないが、単純に計算すると、浮動票を自民と民主で二分した場合の議席配分は、自民227、民主203、公明23、共産11、社民4、国民新党2となる。自公が過半数の議席を確保し、自公連立が継続される公算が高いが、現在のような3分の2を超える状況には至らない。

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