太田「年間世界王者」ピンチ／フェンシング

　フェンシング男子フルーレの北京五輪銀メダリストで、世界ランキング１位の太田雄貴（２３）＝森永製菓＝が８日、成田着の航空機で凱旋（がいせん）帰国。笑顔の太田を待ち受けたのは、世界ランキングを大きく左右するアジア選手権の突然の日程変更だった。年間王者決定時期を巡り、日本協会が国際連盟（ＩＦ）などに説明を求める事態に発展。日本人初の世界王者誕生に思わぬ暗雲が垂れこめた。

　５日のＷ杯ハバナ大会で５年ぶりのＷ杯優勝。３試合連続の表彰台で３つのメダルを手にし、勇躍帰国した太田を待ち受けていたのは、祝福と“疑惑”だった。

　「年間王者を取らせないためのイジメなのかと思った。あまりに突然だったから」

　太田に近い関係者が怒りの告白をした衝撃の事実。アジア連盟が５月末に突如、アジア選手権（カタール）開催時期を当初予定の８月から世界選手権（１０月、トルコ）終了後の１１月に日程変更していたのだ。日本協会がアジア連盟ＨＰを通じてこの事実を把握したのが、太田が世界ランクで１位になった５月２７日だったことから、強すぎる太田に対する“バッシング”疑惑が深まった。

　各大陸選手権はすべて世界選手権前に行われるのが通例。世界ランキングは過去１年間のポイントを加算し、世界選手権終了後に年間王者が決定する。太田の現在の獲得ポイントは３４２点。２位のカッサーラ（イタリア）とは９０点近い差があるため、太田の世界ランク１位での世界選手権出場は揺るがないが、問題はその後だ。

　「世界選手権後に五輪２位の得点（７８点）が消える」（同関係者）ため、太田が同選手権で表彰台を逃した場合、順位を大きく下げる可能性がある。さらに１１月のアジア選手権のポイントの扱い次第では、日本人初の年間王者の偉業が“疑惑の日程変更”により闇から闇へ葬られてしまう。

　「アジア連盟は“カタール協会の都合が悪くなった”とだけ。事情説明も理由も言わない。最終ランキング決定の時期や算出方法を問い合わせているが、返事もない」とは日本協会の川口大三・総務委員長。さらに「各大陸の公正を期すべき。回答によっては“公平じゃない”と文句を言います」とＩＦなどへの徹底抗戦も辞さない構えだ。

　「今は世界選手権に集中するだけ。あと３カ月ある。作戦を一から練り直します」と太田。そう、世界選手権Ｖが真の世界王者への最短距離となるのは誰よりも本人が分かっている。