インタビュー:与党で90議席減はあり得る=自民党幹事長
リンダ・シーグ記者 吉川裕子記者
[東京 4日 ロイター] 自民党の細田博之幹事長は4日、ロイターのインタビューに応じ、迫る衆院選について与党で過半数獲得は可能としながらも90議席減はあり得ると述べ、選挙情勢の厳しさを明らかにした。
「絶対に勝つ」との強い決意を示しながらも、政権運営は「勝っても苦難の道だ」と語った。
衆院解散・総選挙の時期については任期満了まで3カ月となりもはや時期の問題ではないとして民主党との政策の違いを強調。年金・医療制度、外交・安全保障などで民主党の政策の不備を訴えた。他方、自民党の選挙公約の優先課題には景気拡大策、財政・社会保障問題を挙げ、09年度予算・補正予算の執行で景気の不安は解消し、日本経済が安定過程に入った実績を訴えていくとした。
インタビューの概容は以下の通り。
――総選挙を前に、有権者には民主党に本当に政権を任せられるかとの心配がある一方で、自民党に対する不満もある。自民党に対する信頼感をどうやって回復させるか。
「民主党で政権を担当できるだろうかという国民の不安があるのは事実。他方、自民党が長期政権を担い、現在のように経済的に困難な状況で、政策に対する不満がたまっている。雇用政策や医療・年金などの社会保障政策が不十分、あるいは、過去の年金データ処理における失敗で強い批判を受けている。4年前に小泉政権が郵政民営化を訴えることで国民の圧倒的な人気を得て衆議院における3分の2の議席を取ったことについて、それだけで強い批判がある。そういうこともあって政権を交代しろという声があるのは事実」
「しかし、日本は米欧より優れた年金制度をもっている。また、医療制度では、医者がどのような大手術でもどのような入院でも拒むことがない制度が出来あがっている。しかし、若干保険料を上げたことが批判され、制度の良い点を無視し悪い点だけが強調され、民主党は日本の医療制度は良くないと言い、少子化が進んでいるので年金が崩壊すると主張する。その批判で国民の不満が高まっている。こうした批判に対して、われわれも、きちんと説明し理解を求めなければならないが、理解がなかなか進まないのが悩みだ」
「また外交・安全保障政策では、民主党は自衛隊を海外に派遣し国際協力することには全て反対する立場にたっている。このような外交・安全保障政策をとる民主党が、国際社会で信頼されるかという点は非常に危惧している」
――選挙の対立軸は。
「年金制度、医療制度、外交・安全保障政策。民主党は現行の年金制度は崩壊すると主張するが、崩壊するようなことはない、安心しなさいということを言わなければならない。これが一番大きな対立点だ」
――追加経済対策をめぐっては、民主党から無駄遣いとの批判を浴びている。
「景気対策について、麻生内閣は世界で最も適切にかつ迅速に対応したと考える。今回の世界不況に対して、直ちに対策を講じ、企業倒産・金融不安を除去し、株価を維持する政策を講じ、政府も財政出動することで対応している。これに対して民主党は、巨額な予算を支出し財政が悪化、無駄遣いであると主張している。しかし、これは無駄遣いではなく、世界不況に対応するために必要なことであるということを強く訴えていかなければならない。実際、これで経済は安定過程に入っているのではないかということを訴えていく」
――さらなる財政出動の必要性はないか。
「09年度本予算と補正予算、莫大な額の予算がこれから実行されていくので、景気に大きな不安はない。政府・与党はやるべきことは全てやった。これ以上は考えられない。もちろん米国が今後さらに不況になると大変だが、大体乗り切ったのではないか」
――選挙公約で優先する政策は何か。
「引き続き景気拡大策。国際的に協力し不況から脱却しなければならないということが第一。あとは財政。年金、医療、介護の社会保障経費が増えている。現行の消費税ではとても賄いきれない(ほど拡大し)、財政赤字が増大してしまう実態にある。どの国も(増税は)嫌いだと思うが、英国で15%、独が19%、米国は州によって違うが10%を超えているところが多い。そのくらい消費税をとらないと本当は財政の問題が生じてしまう。日本は先進国で最も低くかつ財政赤字が膨らんでいく。景気が戻ったら、消費税を真剣に考えなければならないというのが政府・与党の考え方だ。これに対して野党は、政権を獲って当分の間、民主党は少なくとも4年は増税の考え方はないと明言している。それで財政の辻褄(つじつま)が合うのか」
「もうひとつが社会保障の問題。われわれは今の制度を変更する必要はないと考えるが、民主党は年金制度もいずれ破綻するので抜本的に見直すべきと言っている。ただ、具体性がない」
――衆院解散時期を決める判断基準は何か。
「衆議院議員の4年の任期のうち、もう3年9カ月が経っている。7月であれ、8月であれ同じことだが、きっかけは今国会で法律案、景気対策その他が全て通過して、やることがなくなったら解散・総選挙になると思っている。それには1─2カ月かかる。しかし、どちらにしても任期は3カ月しかない。8月の上旬だろうと下旬だろうと、9月の上旬に行われようと、もはや時期の問題ではない。政策を国民に訴えた時にどちらが勝つかに絞られている」
――2005年の衆院選では3分の2を獲得した。今回は。
「3分の2は不可能だ。過半数をめざしている。自民党で過半数をとることがベスト。それより悪いケースでは自民・公明で過半数だ。今(与党で衆院議席が)334ある。それを241でいいと言っており、90議席減はあり得ると思っている。それ以上、減らさないために努力する」
「241以上の議席を自民・公明でとることは困難ではない。可能だ。ただその次にくる問題点として、今までは衆院で3分の2議席があり、大事な法案は参院で否決されても衆院で可決することができた。しかし、今度はそれができなくなる。自民・公明で過半数を取っても、あらゆる法案は野党と協議をしていかなければならない」
「国会における意思決定が極めて遅くなってしまう。あらゆることを与野党で協議し、あらゆることを妥協しなければならなくなると思う」
――打開策は。
「その時にいろいろなことが起こるかも知れない。例えば、小沢氏(前民主党代表)は1年半前に、大連立内閣をドイツのようにつくり、皆で協議して政治を運営しましょうと提案した。しかし、民主党内で反対が出て否決された。そのような考え方が出てくる可能性は当然あるが、選挙結果を見なければいけない」
「選挙が終わって、勝っても苦難の道だ。負ければ政権が移るだけ。しかし、負ける前提のことは考えていない。絶対に勝つ」
――株式を市場から買い取る法案の扱いは。
「7000円台まで下がった日経平均株価が9700円まで上がっている。米国株も連動し、株式市場全体に対する安心感が出ており、直接、市場から株式を買い上げる政策は当面不要との考え方は共通している。しかし、米国の金融機関が崩壊を始める可能性はゼロとは思っておらず、その場合にはNY市場が暴落する可能性がなきにしもあらずだ。その時に日本市場も必要な対策はとらなければならない。その唯一の策は、資本市場危機対応法案しかない。これは必要な時には直ちに発動、あるいは直ちに法案を通す。衆参も2日ぐらいであげて通せば法律になる。解散になるまで留保する状態を続ける」
――国会同意人事に関しても、同意が得られないために欠員が生じることを回避するため、後任が任命されるまで前任者が職務を継続することを規定した法案を議員立法として提出した。同法案の扱いは。
「民主党が反対するだろう。人事に関する同意権を乱用しており、その武器を失うことは嫌だということだろう」
――廃案になるのか。
「なる可能性はあると思うが、与党として提出した法案なので成立に向けて努力したい」
――日銀審議委員の欠員が12月には2人になりかねない。
「それは12月の話。その前に誰か入れる。選挙の結果があれば(できる)」
(ロイター日本語ニュース 吉川 裕子記者)
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