「新型インフルエンザ」報道  09517
                                その2  その3
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「渡航歴なし」に保健所も困惑 
 新型インフルエンザかどうか詳しい検査をする目安になっていた海外への渡航歴。
16日、渡航歴のない高校生の感染が判明したことで、全国の自治体からは困惑の声があがっている。

 これまで全国のほとんどの保健所では、本人や家族などがメキシコや米国、
カナダなどの発生国を最近訪問したことがあるかどうかを新型インフルエンザを疑う目安にしていた。
インフルエンザの簡易検査だけでは、季節性のインフルエンザ(A香港型とAソ連型)と区別ができないためだ。

 しかし今回の事態を受け、神戸市の周辺の自治体はこの日、相次いで遺伝子検査の実施基準を改め、
奈良県は簡易検査で「A型陽性」の場合、過去7日以内に神戸市内に足を踏み入れたかどうかを条件に加えた。
大阪府や京都市では、渡航歴の有無に関係なく、A型陽性なら全員に遺伝子検査をすることにした。

 ただし、どの保健所もコストや人員の問題から、検査の限界を口にする。
1日平均100人超がインフルエンザと診断されている千葉県の担当者は「人員や機器の余裕がない。
渡航歴のない人の検査で機器を占有すると、一番警戒すべき渡航歴のある人の検査に支障が出る」と指摘。
東京都の担当者も「発熱患者すべてに遺伝子検査をするには、時間的、人員的に困難」と話した。

(引用終わり)
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読売新聞の記者が意識していたのかどうかは分からないが、この記事には非常に重要な情報が書かれている。
それは、渡航歴のないインフルエンザ患者のウィルスに遺伝子検査を施してるのは関西の府県だけである、という情報である。

これが非常に重要な情報である理由は、
兵庫県・大阪府を中心とする関西だけで新型インフルエンザ患者が多数発生している理由を
5
17日現在において合理的に説明できる唯一の情報だからである。

にもかかわらず、517日現在この情報はほとんど報道されていない。
確認した限りでは新聞では読売新聞だけある。
読売新聞にしても、遺伝子検査の有無を患者数の地域的偏在の理由として書いているわけではない。
テレビに至ってはまったく報道されていない。



では、なぜこの情報がほとんど報道されないのだろうか。
今の時点で飛躍したことは言えないが、すでに某巨大掲示板では
「東京や関東から国内感染者が出ないカラクリ」 などのタイトルで活発に議論されている。

しかし、今の時点でも一つだけ確実に言えることがある。
それは、東京都と同じ検査基準なら兵庫県と大阪府の感染者数はいまだにゼロである、ということだ。
(成田で発見された患者を除く)

追記 521
5
20日に東京都と川崎市で渡航歴のある感染者が2人発見された。
この時点で、関西の遺伝子検査の基準が関東と同じなら、感染者数は
関東 2
関西 0





追記 520

5
19日、東京都は渡航歴のない人には実施しないと言っていたA型陽性の遺伝子検査を実施すると発表した。
東京都の発表
しかしこれはいわば「アリバイ作り」のための政策である。

兵庫県や大阪府がA型陽性であれば無条件に遺伝子検査を実施しているのに対して、
東京都の遺伝子検査には次の条件が必要になる。
1.病院で38度以上の発熱などがある入院患者と医療従事者が3人以上
2.学校で1つのクラスやクラブで同様の症状がある生徒が3人以上

基本的にはこの2ケースでしか遺伝子検査は実施されない。
この2ケースでしか渡航歴のない人の新型インフルエンザは発見されない。

ケース1については、一見当てはまる事例が多いようである。
しかし、3人の中には診察に訪れた外来患者は入っていないことに注目してほしい。
この時期、どこの病院も通常であろうと新型であろうとインフルエンザには細心の注意をはらっているはずである。
病院としても遺伝子検査の対象になるような事態は招きたくないだろう。
これに該当する病院はほとんどないと言っていいだろう。

ケース2についても、学校単位ではなくクラス単位やクラブ単位で3人である。
また、東京都教育委員会は、
「全学校の児童・生徒に登校前、家庭で毎朝の検温をしてもらい、
発熱などがある場合は登校を見合わせるよう求めている。」 都教委の要請
つまり、この条件も遺伝子検査をできるだけ実施しなくてもいいように、という条件なのである。

では、渡航歴のない人が発熱があった場合に、個人あるいは家族単位で病院に行った時はどうなのか。
この場合にはA型陽性でも遺伝子検査はしなくていい、してもらえないのである。

以上を総合すると、519日の東京都の発表は、
「渡航歴のない人でも遺伝子検査を実施する」という発表ではなく、
「渡航歴のない人にも遺伝子検査は実施するが、その件数は可能な限り少なくする」という発表なのである。




渡航歴のない人に遺伝子検査を実施するケース1および2について、「基本的には」と書いたが、
実はもう一つのケースが想定されている。

 そのケースとは、「国内感染が発生した関西地域の確定患者との濃厚接触者」、
  つまり関西に旅行してきた人は個人でも遺伝子検査の対象になる、されるのである。 

 そして、厚生労働大臣の次のような発言である。
  「国内にもうウイルスが蔓延しているというのを想定していいと思います。関西だけではなくて、おそらく。
  新幹線に乗って、そういうウイルスを持っている方が東京に来られれば、東京にも当然蔓延している可能性があります。」

AとBから、誰もがある意図を見るはずである。




また、厚労相の発言には、
兵庫県や大阪府は遺伝子検査の対象を可能な限り広げたから最初に多数の感染者が見つかったので、
逆に言えば東京は遺伝子検査をしていなかったから感染者が顕在化していないだけであり
普通に考えれば、関西とは関係なく東京にも感染者が存在しているのでないかという当然の推測は微塵もない。

当然、マスコミもそれに沿った報道姿勢であり、
なぜ感染者が兵庫県と大阪府に集中しているのかという当然の疑問にも触れようとしないのである。

【 空港以外の国内で新型インフルエンザ患者が最初に認知された地域は関西である 】
これは事実である。しかし
【 空港以外の国内で新型インフルエンザ患者が最初に発生した地域は関西である 】
これは事実と確定したわけではない。また、事実と推測するに値する有力な根拠もない。
この二つはイコールではないのだ。

このなんの根拠もない推測にしか過ぎないことを、
厚労省と東京都と東京マスコミは権力を使って 三位一体で強引に
「最初に認知された地域」=「最初に発生した地域」とし、
最初に発生した地域=関西ということを既成事実化しようしているのである。

そこに感じられるのは、ひたすら、東京は国内最初の発生地ではない、発生地であってはならない、
発生地にしたくない、だから関西に押し付けてしまえという宗教的な信念である。

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