日中の経済対話が七日行われ、知的財産保護への協力などで合意したが懸案に進展はなかった。米中は来月に安全保障も含む「戦略・経済対話」を始める。日中の協議制度の立ち遅れが目立つ。
閣僚級のハイレベル経済対話は、あふれる日本製品の海賊版に対し、知的財産の保護を話し合う協議機関を設立することで合意した。環境・省エネ、途上国支援や地震対策などの協力を盛り込んだ十一の合意文書を交換した。
しかし、中国が来年五月に実施する、情報技術(IT)製品の“設計図”をメーカーに強制開示させる制度について、日本が撤回を求めたのに対し中国は拒否した。
麻生太郎首相は来日した王岐山副首相と八日に会見し北朝鮮への制裁や東シナ海ガス田の共同開発促進について協力を要請した。
王副首相は「関心は胡錦濤国家主席に伝える」と述べるにとどまり、踏み込んだ発言を避けた。
日中ハイレベル経済対話は福田康夫前政権で始まり第二回は昨年十二月の予定だった。しかし、中国は国内日程などを理由に延期を続け四月末の麻生首相訪中で、ようやく今回の開催が決まった。
一方で中国は昨年十二月、末期のブッシュ政権と閣僚級の「戦略経済対話」を二日間、開いた。
今年二月のクリントン米国務長官訪中では閣僚級協議を政治、安全保障問題も扱う新たな「戦略・経済対話」に拡大することで合意した。初会合は七月の最終週に二日間、ワシントンで開かれる。
中国が日本に比べ米国との協議を重視しているのは明らかだ。麻生政権が発足当初から総選挙の時期を問題にされ、不安定だったことも影響したとされる。しかし、経済対話を「実務者間の話」(麻生首相)として、戦略対話に発展させる方針を持たない日本の態度にも原因があるのではないか。
急速な成長とともに軍事力を増強する中国とはさまざまなチャンネルで対話を重ね、その意図や実態を見抜く必要がある。オバマ政権が中国との対話制度確立を急ぐのは、こうした狙いだ。
日本が中国との対話制度確立を怠っていることは、結果的に米中が日本抜きで東アジアの問題を相談し決めるリスクを高める。
歴史的にも日本は中国と欧米の橋渡しをしてきた。日本が中国との全面的な対話制度を確立し相互に理解を深めることは、外交的立場を強めるだけでなく日米中三国の関係を安定させるはずだ。
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