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【主張】テロ支援国再指定 米政府は迷わず踏み切れ
核やミサイルの実験を繰り返す北朝鮮に対し、クリントン米国務長官が「テロ支援国家に再指定する検討作業に入った」と明らかにした。
テロ指定は金融制裁とともに米国の有力なカードだった。にもかかわらず昨年秋、核施設無能力化と交換に解除され、北にただ取りされている。日本の強い要望でもある再指定を速やかに実施してほしい。
クリントン長官の発言は、米上院共和党議員8人が「北はテロ支援をやめず、ブッシュ前大統領が望んだ方向にも進んでいない」と連名で再指定を求めた書簡に反応したものだ。
米テレビ番組で「書簡を真剣に受け止めたい。指定解除の目的は北の行動で無になりつつある」と語り、「対話と圧力」のうち圧力に軸足を移す姿勢を明確にした。長官の発言は正しい方向であり、日本としても歓迎したい。
当初のオバマ政権は6カ国協議を継続する一方で、対話重視に傾いていた。ボズワース政府特使は4月に訪米した日本の拉致被害者家族会に「金融制裁もテロ支援国再指定も考えていない」との姿勢で失望と落胆を招いたほどだ。
ところが北はミサイル発射、核再実験と挑発行動を続けた。オバマ大統領らも「ルール違反を罰しなければならない」と、圧力強化にかじを切らざるを得なくなったのは当然だ。先に日韓中を歴訪したスタインバーグ国務副長官も「強い姿勢」を説いて回った。
オバマ政権が北への認識を改めたのはよい。ただし、大切なことは、これを具体的で実効ある行動に移していくことである。
核再実験からすでに2週間たったが、国連安保理制裁決議をまとめる作業は、北への刺激を避けたい中国の思惑などで難航中だ。テロ支援国家の再指定や金融制裁については米単独でも可能だが、貨物検査(臨検)や武器禁輸などは中露を含む加盟国の足並みをそろえなければ役には立たない。
北はその後も安保理に「謝罪」を要求したり、ミサイル発射準備とみられる作業を続けるなど、自らの行動を反省する姿勢は全くみられない。
北の行動を改めさせるには、米国が日韓との結束を軸に中露を説得し、時をおかずに強力な制裁決議をまとめることが必要だ。その上でテロ支援国家再指定や金融制裁にも踏み切り、強い指導力を世界に示してもらいたい。