日中両国政府の主要経済閣僚による第2回「ハイレベル経済対話」が都内で開かれた。知的財産権の保護や途上国支援などで前進したが、食の安全や東シナ海のガス田開発といった懸案は進展がなく、経済危機や地球温暖化対策などグローバルな問題では踏み込み不足が目立った。
知財保護では模倣品対策や関連法制の運用などを話し合う政府間協議の場を設ける覚書を交わした。中国での模倣品による日本企業の被害は9兆円に達するとの試算がある。
両国が強く期待する省エネ・環境分野での協力推進のためにも、中国での知財保護の強化は欠かせない。新たな枠組みが早急に効果を発揮するよう双方の努力を見守りたい。
日中の企業がアジアなど第三国に進出する際に、双方の政府系金融機関が協調融資するとの協力文書も結んだ。中国と日本はそれぞれ世界で1、2位の外貨準備保有国。加えて中国の豊富な労働力と日本の高い技術力は補完関係にある。インフラなどの潜在需要が大きい途上国の成長支援で連携する意義は大きい。
そのほか物流分野での協力強化に向けた局長級の対話の場の設置、中国の省エネ推進や水質浄化に向けた協議の開始など、幅広い分野で協力文書と合意ができた。
靖国問題でぎくしゃくしていた3年前までとは様変わりで、実務面で日中関係が着実に深まっていることを歓迎したい。ただ、いくつかの懸案事項は先送りされた感が強い。
中国が2010年5月に導入する予定のIT(情報技術)製品の技術情報の強制開示制度について日本側は改めて見直しを求めたが、中国側は聞き置くとの姿勢に終始した。
日米欧などの企業は同制度によって機密情報が流出するのではないかと懸念している。経済危機で縮小した世界の投資と貿易をさらに阻害しかねず、中国政府は撤回すべきである。日本政府は米欧とも協力して中国への働きかけを強めてほしい。
双方は世界経済の回復のため協力し保護主義を抑制するとの原則的な考え方で一致したが、具体的な取り組みには踏み込まなかった。前の週に北京で開いた米中間の対話のように日中間でも世界経済のあり方を話し合う時期ではないか。