最終更新: 2009/06/09 08:41

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「絶対に断らない救急医療」を実現するER方式の仕組みを取材しました。

「絶対に断らない救急医療」を実現するER方式の仕組みを取材しました。
沖縄の「絶対に断らない救急医療」を実現するER方式の仕組みを取材しました。

夜のとばりが下りた沖縄市内の交差点で、正面衝突事故が発生した。作動したエアバッグが強い衝撃を物語る。
救急車が向かった先は、沖縄県立中部病院で、事故でけがをしたドライバーは妊娠している女性だった。
早産などのリスクが想定される難しいケースだが、中部病院のER型救命救急センターは、どのような救急患者でも絶対に断ることはしない。
ERには、産婦人科と外科のドクターが合流し、治療方針を救急医と検討した。
出血が激しい足の傷を処置しながら、懸念されるおなかの子どもの状態をエコー検査で確認する。
女性は、ERから産婦人科病棟に移されることになった。
沖縄県立中部病院産科副部長の金城国仁さんは「赤ちゃんの方は、一応無事で。お母さんの方の血圧等も落ち着いていますよと。24時間は入院になります。遅れて変化が起こってくるときがあるんです」と話した。
沖縄市など人口およそ46万人をカバーする県立中部病院は、軽症から重症まで、すべての患者を受け入れるER方式の救急医療を創立から40年以上続けている。
心筋こうそくの発作でERに搬送されてきた患者は、検査によって、心臓の血管が詰まりかけていると判明した。
沖縄県立中部病院循環器内科部長の平田一仁さんは、緊急にカテーテル治療を行うことを決断した。
長さおよそ1メートルのカテーテルと呼ばれる細い管を、大腿(だいたい)部付け根の動脈から心臓まで入れていく。
そして、詰まりかけた血管部分にカテーテルを差し込み、網目状のステントで広げる処置を行う。
その結果、血流が回復し、患者は危機を脱した。
平田一仁さんは「もうちょっと治療、来院とか治療が遅かったら、ひょっとすると、残念なことになっていた」と話した。
日本で唯一の地上戦が行われ、終戦後はアメリカの統治下にあった沖縄は、医療分野においてもアメリカの強い影響を受けて、中部病院は、ER方式の救急医療を築き上げた。
沖縄県立中部病院副院長の宮城良充さんは「どうしても、救急中心に医療が復興していったという形があるわけですね。ですから、われわれの病院のポリシーとしても、来る救急患者は、すべて受け入れるという形が続いていって、おのずからそれがER型という形になったという」と話した。
中部病院のERを訪れる救急患者は、年間およそ3万8,000人で、患者の治療は受け付け順ではなく、緊急性を最優先にして決めている。
「トリアージ」と呼ばれる役割は、ERの看護師が担う。
沖縄県立中部病院ER看護師の仲宗根 美也子さんは「患者さんが急変している人なのか、それかもう少し診察を待てる方なのかっていう判断をして、見極める役割がまず第1になってくるんですね」と話した。
すべての救急患者を受け入れるため、ERの救急医は、診断と初期治療までを担当し、入院や手術が必要な患者は、専門の診療科に引き継ぐ。
この方式によって、常に新しい救急患者の受け入れが可能になった。
沖縄県立中部病院ER救急医の高良剛 ロベルトさんは「この中部病院は、救急にいる人間だけが救急を診ているんじゃなくて、全部の病棟、全職員ですね。全科の医者も救急を診るという姿勢でいるので」と話した。
午後3時半、脳内出血の疑いで、1人の患者がERに運ばれてきた。
CT検査をもとにした3D画像の分析によって、頭がい骨内の動脈りゅうを確認、時間との勝負とみた脳外科の奥山 久仁男さんは、緊急手術の準備を研修医の中山 由紀子さんに指示した。
午後10時、わずかなミスも許されない手術が始まった。
手術室のスタッフは、3交代制のシフトを敷いて、ERの患者に24時間対応している。
手術室に入ってから1時間半後、頭がい骨が外された。
そして、脳をカバーしている硬膜を切開し、出血原因となっている動脈りゅうをクリッピングという方法で止血する。
日付が変わって午前3時すぎ、手術は終了し、一命を取り留めた患者は、集中治療室に移された。
すべての救急患者を受け入れることは、精神的にも体力的にも、スタッフには大きな負担がかかる。
そんなERの現場に、なぜ彼らは踏みとどまるのか聞いた。
仲宗根 美也子さんは「やっぱり、自分は人助けしてるんだなあっていう実感だけで、仕事を続けているっていう感じですね」と話した。
高良剛 ロベルトさんは「どんな患者さんでも診てあげるから来ていいですよって言えるっていうのは、非常に幸せなことですね」と語った。
最後のとりでを守る沖縄県立中部病院のスタッフたち。ERのドアは、24時間いつでも地域の住民に向けて開かれている。

(06/09 00:38)


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